【 JAARAで散歩】12大使館が集積 ラテンアメリカの外交の拠点、西麻布のビルへ

         


 
 大使館が多い港区の中でも、西麻布は多くが設置されているところです。それもそのはず、12の大使館が入居しているビルがありました。ふと気が付いて、こんな形もあるんだなあ、と思いました。表札の国名の表示を見ていると、それぞれのお国の事情が少し分かってくるようです。(2023.02.22)
 神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。

§ 12の大使館 大半が中南米

 六本木から西麻布へ歩いて行くと、国旗がたくさん立っているビルがあります。
 

 
 ビルの表札を見ると、12の大使館が入っているのでした。9階建ての7~9階に入居しているようです。


 
 次の国々です。
①コスタリカ共和国
コスタリカ共和国国旗
 
②ニカラグア共和国
ニカラグア共和国国旗
 
③ドミニカ共和国
ドミニカ共和国国旗
 
④グァテマラ共和国
グアテマラ共和国国旗
 
⑤ハイチ共和国
ハイチ共和国国旗
 
⑥ウルグアイ共和国
(外務省は「ウルグアイ東方共和国」)
ウルグアイ東方共和国国旗
 
⑦ホンデゥラス共和国
(外務省は「ホンジュラス共和国」)
ホンジュラス共和国国旗
 
⑧エルサルバドル共和国
エルサルバドル共和国国旗
 
⑨ボリビア多民族国
ボリビア多民族国国旗
 
⑩エクアドル共和国
エクアドル共和国国旗
 
⑪イエメン共和国
イエメン共和国国旗
 
⑫ベネズエラ・ボリバル共和国
ベネズエラ・ボリバル共和国国旗
です。
 
 ほとんどが中南米、いわゆるラテンアメリカの国々です。「ラテンアメリカサロン」という部屋もあるようです。
 

 

 
 ここに大使館があるほとんどの国と日本は戦前に外交関係を樹立し、先の大戦で中断した後、戦後に再開しています。
 ボリビアには戦前、戦前に日本人が入植したこともあり、日系人が約1万人いるということですが、そのほかの国は、在留する日本人、日本にいる当該国の人がいずれも1,000人未満です。(外務省のHPに記載がない国もあります)。

§ 国名から見える歴史

 国名の外国語の表示はほとんどがスペイン語。でもハイチはフランス語、ボリビアはポルトガル語、イエメンは英語です。いろいろ歴史的経緯があるのでしょう。
 
 国名の表示をみて、「おや?」と思うこともがありました。
 
 まずウルグアイです。ビルの外国語表示はスペイン語で「ENBAJADA DE LA REPUBULICA ORIENTAL DEL URUGUAY」となっています。国名に「オリエンタル」が入っています。外務省も「ウルグアイ東方共和国」としています。
 外務省のページによると、「東方(Oriental)とは,ウルグアイ川の東岸に位置しているところから来ており,ウルグアイ人は自らを「東方人(Orientales)」と自称することがある」と記載しています。
 スペインとボルトガルが争った後、スペイン領となり、「ウルグアイ川東岸地帯(Banda Oriental del Uruguay,バンダ・オリエンタル)」と呼ばれるようになったようです。
 
 次はボリビアです。「ボリビア多民族国」です。多くの民族がいるのかなあ。
 外務省のHPは「先住民41%、非先住民59%」としていますが、ウィキペディアは過去の報道を引いて「先住民人口比率が85%と南米最多である」としています(混血の人も含む)。
 2009年1月25日、先住民の権利を拡大する新憲法が承認され、国名も変わりました。
 この憲法では、▽下院における先住民の比例的参加の保障、先住民裁判権の導入▽先住民族固有の規範による自治を認める▽土地無し農民・先住民に土地を分配する観点から、土地所有に上限を設定―などが定められました
 
 ラテンアメリカの国々を独立に導いた革命家、シモン・ボリバルさんの名残りも見えます。
 ボリビアは独立に際して、シモン・ボリバル将軍と、アントニオ・ホセ・デ・スクレ将軍を賞賛し、国名をボリビア、首都名をスクレと定めたそうです。
 ベネズエラは「ベネズエラ・ボリバル共和国」です。1999年に就任した大統領は、反米・ボリバル主義を掲げ、国名が「ベネズエラ・ボリバル共和国」に改称されました。
 ボリバル主義とは、「ラテンアメリカにアメリカ合衆国の介入を許さない」ということでしょう。
 ボリバルさんの偉業の影響はいまでも続いているようです。
 

§ 国旗は上げ下げはビルが担当?

 ちょうど通りかかったとき、国旗の掲揚を終える時刻だったらしく、担当者の方が現れました。
 

 
 旗を順番に下ろして、たたんで、かごに入れてビルに帰って行きました。
 

 

§ 西麻布の大使館集積ビルのまとめ

 街を歩くと、思わぬ所に思わぬ建物があるものです。いろいろな発見がありますね。きょうもいい一日になりそうです。
 
【 JAARAで散歩】これまでの「大使館を見る散歩」
◇戦時下のウクライナの人々の思いを感じに 西麻布のウクライナ大使館へ
◇港区にはなぜ大使館が多いのか 歴史を思い浮かべながら西麻布へ
◇ソフトパワーをアピールするパネルを見に 元麻布の中国大使館へ
◇まだ見ぬ国の人々を思い浮かべて 大使館を見に元麻布へ
◇バルト海の未知の国の歴史を思う リトアニア大使館を見に元麻布へ