【単身赴任実録】悲しいときは「グリーングリーン」という歌を聞く

         


 
 なんとなく、どうしようもなく、悲しくなる時があります。その時は悲しみについて考えます。考えるといっても「グリーングリーン」という歌をただ聞くだけです。子どもの頃の印象とは違って、大変悲しいうたです。つらく悲しい目に遭わなければ、涙を流すこともできないことを思います。

§ 日本語の歌詞はオリジナル

 「グリーングリーン」はNHKの「みんなのうた」で1967年の4~5月に放送されたとのことです。私が最初に聞いたのはみんなのうただったのでしょう。
 軽快なリズムで「青空には ことりがうたい 丘の上には ララ 緑がもえる」という明るい歌詞が歌われるので、こどもの頃は気が付きませんでしたが、大人になって、大変に悲しい歌なのがわかりました。


 元はアメリカのフォークグループが1963年6月にリリースしたヒット曲といいます。
 1963年というとベトナム戦争が拡大していた頃です。6月11日、南ベトナムのサイゴンで、一人の僧侶が炎に包まれて焼身自殺しました。当時の南ベトナムのゴ・ディン・ジエム政権に抗議するためでした。ゴ・ディン・ジエム大統領はケネディ政権と対立し11月2日に暗殺されます。そしてその3週間後、11月22日にケネディ大統領が暗殺されました。1963年はそんな年でした。
 
 「みんなのうた」の日本語の歌詞は、元歌とはまったく違うストーリーになっています。放送された1967年というと、ベトナム戦争は深刻化し、中国では前年に文化大革命が始まっていました。フランスではストラスブール大学の学生による民主化運動がパリへと波及し、1968年の〝五月革命〟へとつながっていく時期。日本では60年代後半に入ると、各地の大学でストライキなどの闘争が起きていました。

§ この世に生きるよろこびと悲しみ

 この歌の物語の中で、主人公は父親と「この世に生きるよろこび そして 悲しみのこと」を話し合います。会話を通じて主人公は、一定の考えを得たのでしょう。ただ、考えが完成したわけではありません。考えを完成させるには行動と経験が要るのだと思います。
 その後、この主人公は、つらく悲しいことに遭遇します。その時、父親との「つらく悲しい時にも泣くんじゃない」との約束を守ります。

§ いま流れる涙は

 日本語の歌詞の作詞者は片岡輝さん(かたおか・ひかる)という人です。「この世に生きるよろこび そして 悲しみ」が何であるか、片岡さんに聞かないと分かりません。聞かなくていいのかもしれません。自分で考えればいいので。
 この歌を聞いて考えたこと。
 涙を流すには、つらく悲しい目に遭わなければならないこと。つらく悲しい目に遭わなければ涙を流すこともできないこと。懸命に生きなければ、つらく悲しい目にも遭えないだろうこと。

§ 悲しみを考えるまとめ

 この歌を聞くと涙があふれることがあります。でも、あふれてくる涙は、涙ではありません。
 
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