ステップ、動き、多様化する振り付け 第10回全日本小中学生ダンスコンクール 2022年東日本大会(オープン参加の部 中学生部門)

         

 8月11日、東京の新宿文化センターに全日本小中学生ダンスコンクール 2022年東日本大会(オープン参加の部 中学生部門)を観に行きました。気が付いたのは、ステップや動きが以前と比べて多様化していること。バキバキの「ロッキング」、ディス・イズ「ヒップホップ」というような従来の固定的なジャンルにとらわれない作品が多いなあと感じました。この先、「こんなのありなの?」というダンスが大きな評価を受けていくようになるかもしれません。このコンクールは朝日新聞社主催、キューピー協賛。

§ 8連続ピルエット

 以前のダンスコンテストを観ていると、ロッキングに終始するチームをはじめ、「ニュースクールのヒップホップ全開で行くのね」「タットで攻めるのね」「ハウスの雰囲気を出そうってわけね」というように、なんとなく既成のテイスト、既成の振りでとらえることができました。
 
 今回のコンクールでの出場要件にある「ダンスの種類」は「現代的リズムのダンス(ヒップホップ、ロック、ジャズダンス、サンバなど)」となっています。
 
 ところがところが、「現代的」なリズムに乗せて、クラシック・バレエ(古典的!?)のステップやシルエットを存分に取り入れたチームが複数ありました。8連続回転(ピルエット)をユニゾンでやったチームもあってびっくり。このチームはクラシカルなテイストを流れるように漂わせ、審査員のしずにゃんさんから「奨励賞」を受賞しました。しずにゃんさんは「最初から引き込まれて、審査のメモをするペンに目を落とすのを忘れた」と評価していました。

§ 表現力、印象点

 こうした振り付けの多様性は、表現力と印象点をどう高めるかということから生まれてきていると思います。
 
 コンクールの審査基準は、①作品点 ②技能力 ③表現力 ④チーム力 ⑤印象点―の5項目。テクニカルな技術力はおのずとレベルが決まってしまうので、工夫に集中するのは表現力と印象点になります。振付家ならだれしも、新たな表現を求めた工夫を考えますが、その工夫が、既成のジャンル分け、既成のステップという枠組みを乗り越えたところに、今回の振り付けの多様性が出てきているのでしょう。
 
 このコンクールはパフォーマーが小中学生ということもあって、「チーム力」も重視されています。2分から2分30秒のパフォーマンスうち、45秒はユニゾンで踊ることが必要です。この45秒をどう配分するか、表現力の独自性を発揮しながら全体の流れ、構成の中にユニゾンをどう組み込むか、振付家のアイディアが見て取れるチームもありました。

§ フェイシャル・エクスプレッション

 ダンスは身体表現芸術ですが、表情による表現(フェイシャル・エクスプレッション)も非常に重要と思います。かつての「エラート・リトル」は、次々と変化する表情でオーディエンスを惹きつけましたし、「クールミント」は低通する険しい顔つきをブレイクするように、印象的な表情を組み入れていました。「ペピガエイト」が高い評価を受けたのは、表情の作り込みが大きかったでしょう。
 
 今回のコンクールでも表情の統一性を重視したことがうかがわせるチームが何チームもありました。パフォーマンスの「物語性」を考慮した作品もみられます。「物語性」を表現する場合、フェイシャル・エクスプレッションは大きな推進力になると思います。今後、フェイシャル・エクスプレッションが評価の項目とされるようになるかもしれません。

§ まとめ

 振り付けの多様性はどんどんと進展することでしょう。古典的な洋舞の要素を取り入れることもあるでしょうし、エスニックなダンスにも全体の表現・印象を高めるヒントがあるでしょう。きょうの常識はきのうの非常識。どんな変化があってもおかしくありません。