現代芸術家の蔡國強さんというと火薬を使ったアートという印象がありますが、蔡さんの「高山流水―立体山水画」という岩石による作品が六本木にあります。幅20メートル以上、高さ4メートルほどの大きな作品。岩が画になっているだけでなく、岩に画が描いてあります。理想郷と不条理が入り混じったような印象を受けます。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ 歩道に沿って連なる山
作品は六本木ヒルズの横にあるホテル「グランドハイアット東京」の入口の所にあります。
歩道に沿っていて、山が連なったような形です。
山があって
水が流れているので
まさに山水です。
蔡さんはかつて、日本に住んで活動していたとのことです。
■蔡国強 – Wikipedia
§ 自分を理解してくれる人にはなかなか巡り会えない
曲がり角のところに画賛がありました。
高い山とそこに流れる水
清らかな天地自然
蔡國強 Cai Guo Qiang 2003
高山流水とは高い山と流れる水のことかと思いましたが、「素晴らしい音楽、演奏」の例えなのだそうです。
これには昔話があります。中国の春秋の時代に伯牙さんという琴の名人がいて、友人の鐘子期さんという人は鑑賞がうまい人でした。伯牙さんが高い山を描写して弾くと鐘子期さんは山を感じ、流れる水を描写すると水を感じたそうです。
鐘子期さんが亡くなった後、伯牙さんは琴を弾かなくなりました。それで親友の死のことを「琴の緒絶ゆ」というのだそうです。聞いたことがありませんでしたけど。
また、「高山流水」には「自分の価値を理解してくれる人にはなかなか巡り会えないものだ」という意味もあるそうです。
伯牙さんにとって鐘子期さんのような聞き手はなかなか得難かったからでしょう。
「高山流水遇知音」は一つの成句になっており、「知音」は「知己」(自分を理解してくれる人)と同じ意味に用いられるようです。
このタイトルに蔡國強さんがどんな思いを込めたのかは、分かりません。
■『高山流水(こうざんりゅうすい)』の意味と定義(全文) – 辞書辞典無料検索JLogos
§ 理想郷なんだろうけど感じる不条理
この立体山水画には、さまざまな画が描かれています。
人のような、人でないような影も見えます。
「山水画」は、単なる景色ではなく、桃源郷とか仙境を描くのでしょう。この「画」も賛にあるように「清らかな天地自然」を描いたのでしょう。でもなぜか「不条理」という言葉が浮かんでくるのでした。
■山水画 – Wikipedia
§ 蔡國強さんの立体山水画のまとめ
ふだん何気なしに通り過ぎているところに、何やらすごい作品があるのでした。見ていると色々なことが分かってくるような気がします。きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】六本木で散歩
▽芸術としてのベンチとベンチとしての芸術 六本木・けやき坂へパブリックアートを見に行く
▽若手アーティストの壁画を見に 六本木へ
▽ビルの谷間の神域 六本木・麻布でタイムスリップする
▽大画面の壁画の迫力 赤坂・六本木の地下鉄駅へ
▽雨に消える透明な椅子 六本木・けやき坂のパブリックアート
▽冬のイルミネーション さまざまなシーンを見に 赤坂・六本木へ
▽デザイン・アートの街にアートを見つけに 六本木交差点へ
▽ロアビルの囲いの壁面に現れた「kawaii」を見に六本木へ
【 JAARAで食べ飲み】六本木・西麻布で食べ飲み
▽点心を心おきなく 六本木の『歩高里(ブルゴーニュ)』さんへ
▽オーガニックワインと十割蕎麦 六本木の『莉々庵』さんへ
▽食事メインでお酒もお手頃 六本木の『蕎麦六本』さんへ
▽おいしい上質の焼き鳥を食べに 西麻布の『一歩』さんへ
▽六本木の気楽な居酒屋さん 『松ちゃん』へ
▽西麻布の味わい深い焼き肉屋『胡同』さんへ