この休みはどこかへ散歩に行きますか。六本木の方へ行くなら、「城山ガーデン」を抜けるのはどうでしょう。静かな不思議な空間が広がり、都会のエアポケットのような場所です。一休みするベンチもあります。散歩道のかたわらにアートがあったり、花が咲いていたりします。妙にひっそりとしていて落ち着きます。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ 都会の中にある普通と違う道
神谷町の駅の西側の裏通りを歩くと、何やら丘へ上る階段のようなものがあります。
上りきると道が通っています。静かな道です。公園でもなく、街路でもなく、見慣れた普通の道とはなにかが違う道です。
ここは「城山ガーデン」という場所です。1991年11月の竣工です。事務所、店舗ビルの「城山トラストタワー」(地上37階/地下2階)、住宅ビルの「城山トラストコート」(地上12階/地下4階)などが配置され、都市開発のモデルとして生まれたとのこと。
トラストタワーの所在地地番は虎の門4丁目です。スウェーデン大使館を含め、表通りは六本木1丁目になるので、JAARAに含めることにします。
道へ入ってすぐの所に表示板がありました。
白いところが公開空地です。一般の人が自由に入れるところなので、通り抜けることができます。赤い格子の部分は「活用する公開空地等」となっていて、「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」に基づく区分なのでしょう。けれど、条例自体がなんだかよく分かりません。
大正時代の地図を見ると、この辺りは麻布区市兵衛町1丁目と芝区西久保城山町にまたがっており、現在のスウェーデン大使館の所には「大村邸」と書いてあります。
肥前国大村藩(現長崎県大村市辺り)の藩主だった大村伯爵家の邸宅があったのでしょう。南には「東久邇宮邸」、斜向かいには「住友邸」とありますからお屋敷町です。それを知ると、確かにそのような雰囲気が漂います。
道を歩いて行きます。静かです。正面に見える赤色の建物はスウェーデン大使館です。
生垣には花も咲いています。
まっすぐ進むと表通りへ出るのですが右へ曲がり、メインの建物、城山トラストタワーへ向かいます。
曲がったところには小さな公園があります。
トラストタワーの前は広場になっています。
向かい側にある階段を上って、建物の2階レベルに上がれます。
§ 小径の先に静かなベンチ
円形の広場をめぐる回廊から奥へ小径が延びています。
その先にはベンチがいくつかあり、一休みできます。
何度か来ていますが、どういうわけか、ここはいつも、人がほとんどいません。
§ アルメニアの「ハチュカル」がある散歩道
傾斜地なので、広場をはさんでタワーの反対側(北側)には、2階レベルのままで道が延びています。
スウェーデン人の作家のアートがありました。さりげなく。
「人」というタイトルです。作者のトミー・オストマーさん(1934-2007)は、絵を描く人ですが、この作品のような「人」の造形もしているようです。
その先には、アルメニアのハチュカルがありました。
ハチュカルとは、アルメニアの石碑のことです。「十字(クロス)」と「石」とが連なった言葉のようで、十字架と装飾的な意匠が刻まれることが多いようです。
アルメニアという国がどこにあるかというと、黒海とカスピ海のちょうど中間に位置しています。西はトルコ、南はイラン、東はアゼルバイジャン、北はジョージア(グルジア)です。
このハチュカルには下の方に富士山が見えます。模様の花はアルメニアの国の花(国花)、アネモネかもしれません。
銘板には2016年の設置とあります。この年は、アルメニアが旧ソ連から独立して25年、日本と国交を樹立して24年となる年でした。前年に、城山ガーデンを開発した「森トラスト」の会長夫人がアルメニアを訪れ、日本文化を伝えるイベントを行ったことがご縁のようです。
この道を抜けると表通り、スウェーデン大使館の脇に出ます。
魅力的な造形・色彩の建物です。中の灯りが星形に見えます。
通り向かいは泉ガーデン。泉屋博古館(美術館)があります。この先の泉ガーデンタワーは六本木一丁目駅に直結しています。
§ 城山ガーデンのまとめ
不思議な雰囲気があります。長い歴史を秘めた土地に現代的な建物が佇立していることと、辺りに人が多くなく静かであるためでしょう。異空間を感じます。きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】これまでの六本木で散歩
◇水の流れるオブジェがつくる風景を見に六本木へ
◇ロアビルの囲いの壁面に現れた「kawaii」を見に六本木へ
◇デザイン・アートの街にアートを見つけに 六本木交差点へ