都市空間の合理性の先に人々が求めるものは何か。それは「自然」と「詩情」ではないでしょうか。このごろは、ビルの周囲や道路沿いの植栽に樹木が多く配置され、緑に気持ちを癒されます。そんな中、街角を歩いていて、ふとしたことからメルヘンの世界にいざなわれることがあります。2つの場所をご紹介しましょう。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ ブレーメンの音楽隊か十二支の行列か
麻布十番商店街を六本木方向に抜けきって、左へ切れると、六本木高校の看板が目に入ります。
よく見ると、看板の上に、人と動物たちが行進しています。
最初はブレーメンの音楽隊かと思いました。楽器を吹いているのが人間なので違います。
ウシの頭にネズミが載っていますし、ヘビがいるので、十二支の行列かとも思いました。十二支は神さまの所へ動物たちが集まる時、到着した順で決まりました。
歩くのがゆっくりなウシは、余裕をもって出かけました。頭の良いネズミはそれに便乗して頭に乗っかり、神さまの前でポンと飛び出したので一着になりました。
別の動物がいて十二支ではなさそうです。
いずれにしても、不思議な世界に入り込んで行けそうです。
六本木高校は、芋洗い坂の途中に校門がある東京都立の高校です。
自分のライフスタイルに合わせて、登校時間帯(午前・午後・夜間の三部)を選んで入学し、時間割をつくる「チャレンジスクール」です。チャレンジスクールとは、HPによると、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、チャレンジする学校です。
学校からのメッセージ | 東京都立六本木高等学校 定時制 (metro.ed.jp)
偏差値が高いから入れる、低いから入れないという高校ではないという記事もありました。
看板の上のキャラクターたちからは、学校の〝余裕〟が感じられてうれしくなります。
§ グリム童話の切り絵に囲まれ
赤坂を歩いていると、ふと切り絵が目に留まりました。
英国の少年の冒険物語のようです。これがあるのは、赤坂4丁目の「タク・アカサカビル」です。
遠目は普通のビルなのですが。 近寄ると切り絵が見えてきます。
角を曲がると、駐車スペースを取り囲むように切り絵がつづいていて…
これは「不思議の国アリス」と「ピーターパン」
こちらは「ハメルンの笛吹き男」と「赤ずきんちゃん」「ヘンゼルとグレーテル」でしょうか。
駐車場の内側の方から見ると、シルエットが浮かび上がっていました。
童話の楽しいような恐ろしいような世界に引き込まれます。
§ 街を歩いていてメルヘンの世界のまとめ
子どもの頃に童話を読まなかった人はあまりいないでしょう。創作であるアンデルセンの童話と違い、グリム童話は伝承されていた民話を収集してまとめたお話です。ただ、まとめる過程で倫理的なバイアスが加わり「よい子の話」になりました。
「本当は恐ろしいグリム童話」の「恐ろしさ」がそのまんまになっているのが、シャルル・ペローの童話でしょう。人間の本質が顔をのぞかせている感じがします。
人間はもともと、自己本位で意地悪で、残酷なのかもしれません。それを思い知りながらも、なんとか希望を見出したい気持ちがあるので、童話に引き込まれるのだと思います。
ああ、恐ろしい。けど、きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】パブリックアートを見る散歩
▽街角のトリックアートを見に 西麻布から六本木通りを歩く
▽スケールの大きなストリートアートを見に 北青山のブラジル大使館へ
▽ロアビルの囲いの壁面に現れた「kawaii」を見に六本木へ
▽気鋭の書と大家の絵に圧倒される パブリックアートを見に明治神宮前<原宿>駅へ
▽デザイン・アートの街にアートを見つけに 六本木交差点へ
▽有名彫刻家の作品を見に南麻布の有栖川宮記念公園へ
▽大画面の壁画の迫力 赤坂・六本木の地下鉄駅へ
▽若手アーティストの壁画を見に六本木へ
▽芸術としてのベンチとベンチとしての芸術 六本木・けやき坂へパブリックアートを見に行く