【 JAARAで散歩】安西水丸さんの東京ハイキングの個展を見に 表参道の「山陽堂」さんへ

         


 
 展覧会・七夕の夜⑬『安西水丸 東京ハイキング』―俳句でたどる12か月―が、2023年6月30日から7月15日まで、表参道の「山陽堂書店」さんのギャラリーで開かれていました。東京のここ、そこの風情を、イラストと俳句でつづっています。水丸さんの絵って、見てて全然飽きないんだよなあ。(2023.7.24)
 神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。展覧会は別のをさがしましょ。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。

§ 文章とイラストと俳句

 今回は、水丸さんの著書『東京ハイキング』の原画(元の画)の展覧会です。本の中では月ごとに歩くエリアが分かれていて、たとえば7月(文月)は月島と佃島。
 月島、佃島は子どもの頃になじみの土地といい、その思い出がつづられています。その後に、イラストと俳句があります。
 

 
 東京ハイキングとは、景色を楽しみながら歩く「hiking」と、散歩しながら俳句を詠む「俳句ing」との両方なのでしょう。
 8月(葉月)は「上野」、9月(長月)は「浜松町」、10月(神無月)は「神保町」、11月(霜月)は「築地」、12月(師走)は「人形町」です。
 
 文章、イラスト、俳句。どれもいい、というのがすごくいい。
 

§ 洒脱という言葉が思い浮かぶ

 「七夕の夜」の展覧会は2011年からのようです。水丸さんは2014年に亡くなってしまいましたが、その後も続いて、2023年の今年が13回目になるのでした。
 会場に『週刊NY生活』というタブロイド判週刊新聞の2012年(平成24年)8月18日(土)号が展示されていました。
 水丸さんはその新聞に「東京だより」という連載をしているのでした。
 その回のタイトルは「今年も「ギャラリー山陽堂」で個展を開きました」。「ぼくはなんとなくこのギャラリーが気に入っています」と書いています。(ギャラリー山陽堂のこと)
 高校生の頃、渋谷で映画にお金を使ってしまい、歩いて赤坂の家へ帰る時、山陽堂さんの壁にある谷内六郎さんのモザイク壁画が見えると、「ああ、家までもう一息だなあ」と思ったそうです。
 その当時は今とは別の絵だったそうです。山陽堂さんのページに以前の絵があります。
 
 ■山陽堂書店 山陽堂の歴史 谷内六郎
 
 今の絵は「傘の穴は一番星」です。
 

 
 「遠くに藁葺きの屋根と海が見えます。おそらく南房総の風景だとおもいます。谷内六郎さんの描く海には、ほとんど湘南の海が出てきませんね。そんなところがぼくは好きです」と書いています。
 そんなところが水丸さんらしいのだと私は思います。「洒脱」という言葉が浮かびます。

§ また眺めてみましょうか

 水丸さんの絵は「うまい絵」でなくて「いい絵」なのです。「いい感じの絵」「大好きな絵」という意味の「いい絵」です。文章も「うまい文章」でなくて「いい文章」なのです。きっと「いい人」だったのだと思います。水丸さんの本をまた眺めてみましょうか。きょうもいい一日になりそうです。
 
【 JAARAで散歩】これまでの「神宮前で散歩」
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▽気鋭の書と大家の絵に圧倒される パブリックアートを見に明治神宮前<原宿>駅へ
▽並木150本に90万の光 2022冬のイルミネーションを見に表参道へ
▽デザイナーズマンションの先駆けを見に 神宮前の「ビラ・ビアンカ」へ