【皇室の話題】天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)

         


 
 先週、『女性セブン』が「愛子さま(21)お相手最有力旧皇族男子[4歳年上]は早稲田卒イケメン」との見出しだったのに続き、週刊新潮が「『愛子さま』御所でお見合い!?お相手は…」との見出し。いずれも旧宮家の若い男性についての記事で、この人が皇室に養子に入ることになれば、皇位継承者・皇族数が増え、宮家が廃絶をまぬがれ、愛子内親王の相手にふさわしく「一石三鳥」と勝手な筋書である。この話の前提にあるのが、現在、天皇は男系男子しかなれない(愛子内親王は天皇になれない)という制度だ。これがなぜなのか少し考えてみたい。

§ 「信念」が変わらないと制度は変わらない

 天皇は男系の男子が継承することになっている。なぜそうなっているかというと「むかしからそうだったから」である。「信念」に支えられていると言ってもいい。
 最近の世論調査では、国民の8割が女性天皇(女性の天皇)を支持し、7割が女系天皇(女性の天皇の子どもの天皇)を支持しているが、「天皇は男系男子に限る」という固い信念を持っている人たちがいて、その人たちが現在の政権に影響力を持っているので、制度は変わっていない。「男系男子」の信念を上回る別の信念が現れない限り、変わらない。
 

憲法が変わっても

 男系男子については、現在の皇室典範が1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。「男系」が継承するという意味は、お父さんの系統(男系)に天皇がいなくては天皇になれないということ。お父さん(男)、またはお父さん(男)のお父さん(男)、またはお父さん(男)のお父さん(男)のお父さん(男)、または…(以下略)、が天皇だったらいいわけで、お母さんが天皇であっても、お父さんが天皇と関係ないとダメ、ということ。
 記事に出てくる旧宮家の子孫の場合は、お父さん(男)のお父さん(男)の…と約20回繰り返すと崇光天皇(すこうてんのう、1334-1398)という天皇に行き着く。
 これは、明治の旧皇室典範が第1条の「大日本国皇位は祖宗の皇統にして男系の男子之(これ)を継承す」と定めているのを踏襲している。
 

歴史上の客観的事実

 憲法が変わるのになぜ明治の決まりを踏襲したのか。当時の宮内省(現在は宮内庁)はそれが「歴史上の客観的事実」だからだ、としている。
 新しい皇室典範を策定する作業中の昭和21年(1946年)7月25日付で、宮内省が作成した「皇統を男系に限ることは憲法違反になるか」という文書がある。
 もちろん「違反にならない」と主張する文書だ。どんな内容かというと、だいたい次のようである。
 憲法草案13条(現行憲法14条)は性別や門地(社会的地位や家柄)による差別を禁止しているのだから、皇位の世襲も憲法違反になる。けれども憲法草案は2条で「皇位は世襲」としている。13条の例外になっている。
 世襲というのは「伝統的歴史的観念」だから、個々の具体的場合によってどうするかは違ってくる。では皇室の場合はどうかというと、伊藤博文さん(明治の皇室典範を作った人)は皇室の世襲の内容について、①血統が正しい人が継承する②男系の人が継承する③血統は一つだけ(一系)という3つに要約している。これは「歴史上一の例外もなくつづいて来た客観的事実にもとづく原則である」としている。ほかに代わるものはない。
 「男系の女性天皇」はワンポイントで不安定要素になるから認めない方がいいし、女性を認めないとしても、皇室の話で一般の国民とは関係ないから、男女同権原則を否定することにならない。
 というような内容だ。男系継承は歴史上の客観的事実というわけだ。「客観的事実」というと、いかにも権威がありそうだが、現状肯定に過ぎないとも言える。例えば、まだ奴隷制度があった時代には「奴隷の生活基盤を所有者が握っているのは、歴史上一の例外もなくつづいて来た客観的事実だ」などと言うことができただろう。

制度は変化することも

 歴史的に続いてきた制度は変わらないかというと、変わることもある。例えば、親殺し「尊属殺人」は、戦後の刑法も第200条で「死刑または無期懲役」に処すとして、殺人罪(199条、死刑または無期もしくは5年以上の懲役)より刑が重かった。
 この規定が憲法14条(法の下の平等)に反するかどうかが問題となった。最高裁判所は、1950年(昭和25)の大法廷判決で合憲とした。尊属殺人の刑を重くするのは「人類普遍の道徳原理、すなわち自然法」に基づくとの考えだったという。刑が重いのは「歴史上の客観的事実」でもあったろう。
 だが1973年、最高裁は判例を変更し、「刑が重すぎるのは不合理な差別的取り扱いで憲法違反」だとした。200条は1995年(平成7年)に刑法から削除された。背景には、尊属殺人に対する人々の「信念」が変わったことがあったのだと思う。

「合理的」の議論の背景にあるもの

 天皇にはさまざまな価値観がまとわりついているので一筋縄の話はできない。「皇室の法の問題と刑法の問題を一緒に論じるのはけしからん」という信念もあるだろう。
 議論には合理的な思考、論理的な思考が必要だ。とはいえ、合理性だけでは説明切れない場合がある。というより、合理的、論理的であるかどうかは、その「理」の背後にある考え方によって決まってくる。「信念」が変わらないと、「合理的な」皇室制度に変えることはできない。
 

§ 雑誌の主な見出し

『女性自身』 2023年3月21日号:3月7日発売
■紀子さま[56]体幹氏の屈辱 英国王[74]「対面はお断り」
『週刊女性』 2023年3月21日号:3月7日発売
■眞子さん 共働きで決別「籠中の鳥」生活
『週刊新潮』 2023年3月16日号:3月9日発売
■「愛子さま」御所でお見合い!?お相手は…「旧皇族の皇籍復帰」「常陸宮家も安泰」「〝悪い虫〟排除」 一石三鳥の最強カードは旧宮家「賀陽家」美男の御令息
『女性セブン』 2023年3月23日号:3月9日発売
■「秋篠宮妃紀子さま(56)「佳子さま(28)の豪邸ひとり暮らし」に24時間監視指令
■小室圭さん(31)狙い定めた「皇室の代理人」ビジネス

§ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽3月3日(金曜)
【天皇・皇后】モンゴルのザンダンシャタル国家大会議議長夫妻と面会(皇居・御所)
【天皇・皇后】農業や畜産業、水産業などの分野で優れた業績を上げた農林水産祭の天皇杯受賞者7人と面会(皇居・宮殿)
▽3月6日(月曜)
【天皇】モロッコのタールビー・エル・アラミー衆院議長と面会(皇居・御所)
▽3月7日(火曜)
【天皇・皇后】ルーマニアのヨハニス大統領夫妻と会見(皇居・御所)
▽3月8日(水曜)
【天皇】フィジーとパキスタンの駐日大使の信任状捧呈(ほうてい)式(皇居・宮殿)。大使らの送迎に馬車列が3年ぶりに復活
▽3月9日(木曜)
【天皇・皇后】東日本大震災の発生から12年になるのを前に、復興庁の石田優(まさる)事務次官から被災地の復興の現状と課題について説明を受けた(皇居・御所)

秋篠宮家

▽3月3日(金曜)
【秋篠宮・紀子妃】地域の現場で献身的な医療活動に取り組む医師を顕彰する第11回「日本医師会 赤ひげ大賞」のレセプションに臨席(東京都内の会場)
▽3月6日(月曜)
【佳子内親王】全国の女性が暮らしに役立つアイデアを作品にした「第54回なるほど展」を視察(東京都千代田区の東京交通会館)

宮家

▽3月5日(日曜)
【常陸宮】発熱のため日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)に入院していた常陸宮(87)が退院と宮内庁が発表した。約2週間後に再入院し、尿管結石を破砕する手術を受ける
▽3月6日(月曜)
【常陸宮の華子妃】姉の西田泰子(にしだ・やすこ)さんが4日に亡くなったため、4日から30日間、喪に服す。宮内庁が6日発表
▽3月8日(水曜)
【高円宮家の承子女王】37歳の誕生日

宮内庁

▽3月8日(水曜)
▼「信任状捧呈式」で皇居への送迎に使う馬車列が3年ぶりに再開。信任状は新任の外国大使が本国の元首から得て持参し、天皇に手渡す

一般

▽3月3日(金曜)
【英王室】3日、チャールズ国王とカミラ王妃が3月26~31日、フランスとドイツを訪問すると3日発表した。昨年9月にエリザベス女王の死去を受けて国王に即位した後、初めての外国への公式訪問
 
宮内庁HP【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(1月~)】
宮内庁HP【秋篠宮家の御日程 令和5年(1月~)】
 
皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
 
これまでの【皇室の話題】
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)
▽愛子内親王の和歌に注目集まる(2023年1月20日~26日)