【皇室の話題】雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)

         


 
 このごろは秋篠宮夫妻を貶めたり揶揄したりする雑誌記事の風潮が目立つ。しかし振り返ってみれば、代替わり前までは皇太子夫妻へのバッシングともいえる風潮あった。皇室に入ってから体調を崩し、思うように活動できなかった雅子皇后。その苦悩とは何か、どこから来るのか、苦悩を少なくする方法はないのか。今回は少し、考えてみたい。

¶ 雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか

 雅子皇后は1993年6月に徳仁天皇(当時皇太子)と結婚して皇室に入り、2003年12月、心身に失調を来した。主な原因は男子の出産を求められたが果たせなかったことだろう。だが、それ以外でも雅子皇后の生活には苦悩が多かったと思う。どんな苦悩がどこから生じるのか。その苦悩がなくなるようにする方向はあるのだろうか。

§ 法律や決まりから生じる苦悩

 最大の苦悩として彼女を苛んだのは、男子出産を果たせなかったことだろう。
 天皇の後継者は男性に限ると法律(皇室典範)で決まっている。
 「皇后は男子を出産しなければならない」と法律に書いてはいないが、皇族女子は当然に男子の出産を求められる。こればかりは自分の意思や行動ではどうしようもない。苦悩は深い。
 男子の出産が実現しないことに対し、行動の制約が課される。例えば「海外旅行を許されない」。
 これは、出産の環境を整える意味と同時に、パニッシュメントの意味もあったと私は考える。
 行動の制約は海外旅行以外にもあったのではないか。彼女を苛んだことだろう。
 天皇・皇族には一部の基本的人権がない。住む場所は決められ、好きなようにレストランへ行ったり、映画を見たりできない。
 しかしこれらは、分別のある雅子皇后にとって、忍受することができる範囲だったかもしれない。

§ 皇室のしきたりや考え方から生じる苦悩

 皇室内部は人間関係が尋常でない。憲法上は人間の偉さに上下はないが、皇室では天皇が一番偉い存在で、そこから下に、それぞれの位置が階層状に決まっている。
 歴史的な伝統から、皇族の周辺にいる貴族(旧華族)も階層状になっている。
 それぞれの貴族の家には歴史的背景があるので、人物の立ち位置には出自の尊卑も加味される。
 こんな中で生活するのはたいへんに骨が折れるだろう。出自の云々で貶められたと感じることがあったかもしれない。
 さらに皇室には、世間一般とは異なるコミュニケーションスタイルや行動様式がある。人間関係や「ハレとケ」の区別など、さまざまな要因で特殊な言動が決められており、それができないと理不尽な非難を受ける。
 しきたりに従うため、したくもないことをせざるを得ない状況になり、心理的負担になる場面もあったのではないだろうか。

§ 人々の皇室に対する考え方、あるいは無理解から生じる苦悩

 皇族であるがゆえに人々から注目される。挙動が細かく報道される。事実と異なる報道もある。それに人々が反応する。「衆人環視」のような状況になる。皇族である限りは仕方のないことだが、他人に凝視されるほど息苦しいことはない。
 皇族であるがゆえに「いい人」「素晴らしい人」であることを社会から要求される。
 この場合の「社会から要求される」とは、「皇族はいい人でなければならないと考える人がいて、その人の考えと皇族の言動とが合致しないと、その人から非難される」という意味である。
 「いい」「素晴らしい」は非難する側が決めるのであり、皇族の側は決められない。
 皇族が自分の考えを披歴したり反論したりすることを「非難する人々」は許さない。
 無理解もある。愛子内親王は小学生の時、同級生のいじめっ子から「お前のかあちゃんは公務をしない。税金泥棒だ」と謗られたという。病気のために療養していることで悪人呼ばわりされたわけだ。
 子ども特有の言動のようにも受け取れるが、ついこの間、これに似通った非難や、無理解を基にした非難がネット上に散見される事態になった。

§ 苦悩をなくすための方法

 苦悩は避けて通れないのか。苦悩の原因をなくせないのか。
 なくせるものとなくせないものがあるとして、なくせるものはなくしていきたい。
 そのための方法として、「私たちは皇室の人たちに、天皇・皇族であることをお願いしている」と考えるのがよいと、私は思っている。
 私たちが、皇室の歴史やしきたり、現行制度を踏まえた上で「お願いしている」、苦悩の原因を含めて「お願いしている」と考えるのだ。
 そうなると当然私たちは、その苦悩の原因がなぜ存在するのか、なぜそのままにしているのかについて説明する必要がある。
 もちろん「私は天皇・皇族にお願いなんかしていませんよ」という人もいるだろう。そういう人は、天皇・皇族を非難せず、天皇・皇族に「お願い」している人を非難することになる。
 「お願いしている」というとへりくだったように聞こえるが、私たちがお願いし、それを皇室の人たちが受け入れているわけだから、主導権は私たちにある。国民に主導権があることを「国民主権」というのだ。

§ 価値観の違いを乗り越えて

 苦悩の原因の存在理由を考え、存在する理由がないならやめてしまう方法を考える場面で、「お願い」の仕方が人によって違うという事情があるのがやっかいだ。それでなかなかうまくいかない。
 説明をする時に、つまりやめるかやめないかの時に、皇室のどこに価値を置くか、「価値観」の問題に行きつく。
 違った価値観を持つ人たちが、お互いの価値観を理解し、折り合っていく中で、皇室制度や皇室に対する考え方を変更していく。価値観の違いを乗り越えて変えていく。そんな状況になった時、雅子皇后の苦悩は少しずつ取り除かれていくのだろう。
(2023.4.30 皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽4月21日(金曜)
【天皇・皇后】第31回日本医学会総会の開会式に出席(東京都千代田区の東京国際フォーラム)
▽4月25日(火曜)
【天皇・皇后】東京都中央区の「サンキュウ・ウィズ」を訪れ、社内カフェで障害者が働く様子などを見て回り交流

▽4月26日(水曜)
【天皇】来日したバングラデシュのハシナ首相と会見(皇居・御所)

上皇 上皇后

▽4月24日(月曜)
【上皇・上皇后】東京国立近代美術館の70周年記念展「重要文化財の秘密」を観覧。私的な訪問(東京都千代田区)

秋篠宮家

▽4月25日(火曜)
【紀子妃】国内で唯一、結核予防のBCGワクチンを製造する「日本ビーシージー製造」の研究所を視察(東京都清瀬市)。紀子妃は結核予防会の総裁。これに先立ち、清瀬市立清瀬第二中で、生徒たちが結核について学ぶ授業を参観
▽4月27日(木曜)
【秋篠宮・紀子妃】5月の英国訪問を前に上皇夫妻にあいさつ(東京都港区、赤坂御用地の仙洞御所)

宮家

▽4月24日(月曜)
【常陸宮】日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)を退院

宮内庁

▽4月23日(日曜)
▼皇居・吹上御苑で一般向けの自然観察会を開催。新型コロナウイルス禍で2020年以降中止が続き4年ぶり。この日は2020年に当選していた人のうち70歳以上の約80人が参加

一般

▽4月23日(日曜)
【英王室】ルイ王子5歳の誕生日(Prince Louis Arthur Charles of Wales、ウィリアム皇太子の二男)

 
 英王室 ルイ王子が5歳誕生日を迎える チャールズ国王の戴冠式に出席するか注目集まる | 政治 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
 
▼長野県小谷村長選は23日無所属現職の中村義明氏(61)が無所属新人の元外務省職員野崎由紀子(のざき・ゆきこ)氏(59)ら2人を破り再選。落選した野崎氏は1987年に外務省入省で皇后と同期
皇宮警察仕様『GL1100/1500』初展示、働くクルマとバイクの特別展…ホンダコレクションホール | レスポンス(Response.jp)
Honda Collection Hall|Honda公式サイト

¶ 雑誌

『週刊女性』
秋篠宮ご夫妻 戴冠式への渡英費用は推定2.3億円も…英国民から“格下参列”に批判の懸念 | 女性自身 (jisin.jp)
黒田清子さん 夫が都庁で異例のスピード出世!1億円ローンを15年で完済の賢妻ぶり | 女性自身 (jisin.jp)
佳子さま 全日本ろうあ連盟に就職から2年…ご出勤状況について宮内庁の“答え”は? | 女性自身 (jisin.jp)
 
『週刊新潮』
秋篠宮さまが「戴冠式出席への反発の声」に抱かれたお気持ち(デイリー新潮) – Yahoo!ニュース

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(4月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(4月~)】

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL

これまでの【皇室の話題】

▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇・皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
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▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
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