インドネシアでの天皇は、大統領との会見、英雄墓地での供花、文化、産業、学術関係の施設の視察、日本と縁の深い関係者、在留邦人らとの懇談など、ほぼお決まりの行事をこなした。皇后も単独で視察に出向いた。この間の天皇、皇后の振る舞いは、現地の人に好印象を与えたと思われる。天皇、皇族の外国での振る舞いについて考えてみる。
¶ 天皇、皇族が国際的にも「いい人」でなくてはならない理由
小室眞子さんの結婚の時の批判に見られたように、皇族は日本において慎みのある「いい人」として存在しなくてはならない。同様に、天皇、皇族は外国訪問においても「いい人」でなくてはならない。外国の人は天皇、皇族を日本人の代表として見るからだ。日本人が「いい人」なら、代表は当然「いい人」だ。
§ 「いい人」になる場面
天皇、皇族が国際親善で日本のために果たしている役割は、差し当たり次の3つが考えられる。
① 日本国の象徴的な代表として、外国の元首と、政治を抜きに会話をする
② 日本国の歴史を想起させる代表として、歴史的事柄について見解を表明する
③ 日本国民を代表する人物として、日本人とはどんな人たちかを態度で表現する
外国において「いい人」でなくてはならないという事情が生じるのは、③のケースである。態度において「いい人」でなくてはならない。
§ 上皇夫妻は「いい人」を体現
上皇夫妻はこれまで、数々の外国を訪問してきた。そこでは上皇が(日本の天皇として)スピーチで、日本が「平和国家」「文化国家」であることを表明すると同時に、夫妻が日本の国民の代表選手として、穏やかで、礼儀正しく、教養があり、洗練された機知に富み、他者への思いやりのある人物を態度で表現し、日本人のイメージを形成してきた。
§ 「いい人」とは「共感できる人」
上皇夫妻が表現した穏やかで、礼儀正しく、他者への思いやりのある人物像は、外国の人が共感できる人物像であろう。
国際親善とは「価値の共有」「価値に共感していることの相互確認」が基盤となる。人物像として共感を得るために、穏やかで、礼儀正しく、思いやりのある「いい人」である必要がある。
§ 私たちが享受している「いい人」
今回のインドネシア訪問で、天皇、皇后が現地の人たちにどのような印象を持たれたのかの詳しい分析はまだない。今後も天皇、皇族は、外国訪問の際に「いい人」の姿を求められていくのだろう。
私たちが天皇、皇族に、天皇、皇族の役割をやってもらうようお願いする時に、「いい人」であることをお願いしているわけではない。けれど、天皇、皇族はずっと「いい人」であり続けている。これは一重に彼女、彼らの職務意識によるものである。
天皇、皇族の求められる姿が、私たちの意思でなく天皇、皇族の職務意識により実現し、それを私たちが享受しているということに自覚的でありたい。
(2023.7.1 皇室王室勉強家・以出江 凡)
¶ 日誌
天皇 皇后 愛子内親王
▽6月23日(金曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】天皇、皇后は沖縄慰霊の日に当たり、訪問していたインドネシアで黙とう。愛子内親王は皇居・御所で黙とう
【天皇・皇后】インドネシアから帰国
■天皇皇后両陛下 インドネシアご訪問を終えてのご感想:天皇皇后両陛下のご感想 – 宮内庁
▽6月26日(月曜)
【天皇】インドネシア訪問中に国事行為の臨時代行を委任していた秋篠宮から報告を受けた。仏教寺院「ボロブドゥール」で、自ら撮影したニワトリの彫刻の写真を手渡した。秋篠宮は過去にこの彫刻を探していたという(皇居・御所)
▽6月28日(水曜)
【天皇・皇后】上皇夫妻にインドネシアからの帰国のあいさつ。約40分間滞在(東京都港区の赤坂御用地にある仙洞御所)
秋篠宮家
▽6月26日(月曜)
【秋篠宮】インドネシア訪問中に委任されていた国事行為の臨時代行について天皇に報告(皇居・御所)
上皇 上皇后
【上皇・上皇后】沖縄慰霊の日に当たり、東京都港区元赤坂の赤坂御用地にある仙洞(せんとう)御所で黙とう
▽6月28日(水曜)
【上皇・上皇后】天皇、皇后がインドネシアからの帰国のあいさつ(東京都港区の赤坂御用地にある仙洞御所)
宮家
▽6月27日(火曜)
【高円宮の久子妃】フィンランドと英国への訪問を終え帰国
¶ 関連サイト
宮内庁HP
【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(4月~)】
【秋篠宮家のご日程 令和5年(4月~)】
メディア
皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
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