【皇室の話題】上皇、上皇后が皇室に存在する意味とは(2023年5月12日~18日)

         


 
 上皇、上皇后が4年ぶりに地方を訪問した。京都、奈良への私的な訪問である。コロナ禍で活動が制限されたこともあるが、2人は、代替わりの後はなるべく目立たないようにしていたと感じられる。今回は久しぶりに動静が報道された。退位後の上皇と、上皇后の存在は、皇室においてどんな意味があるのか考えてみたい。

¶ 上皇、上皇后が皇室に存在する意味とは

 明仁上皇は2019年4月30日を限りに天皇を退き、上皇となった。明治時代に天皇の地位が法律で定められて以来、初めてのことだった。上皇は皇位継承(復位)ができないのはもちろん、天皇の国事行為の臨時代行もできないし、皇室会議の議員にもならない。そのような上皇、およびその配偶である上皇后が皇室に存在する意味は何だろうか。それは日本に高齢者がいる意味とほぼ重なると思う。

§ 地位と活動は一体不離

 明仁上皇が退位したのは、天皇の「地位と活動は一体不離」という考えからである。天皇の地位にあるのは活動による考え方からすると、体力、知力があることが前提になる。
 年齢を重ねるにつけ、明仁天皇の脳裏に晩年の香淳皇后のことが思い浮かんだかもしれない。状況を認知し、判断し、行動する能力が衰えることを考えて、暗然とした心持ちになったかもしれない。
 英国のエリザベス二世女王は亡くなるまで公務に勤しんだ。奇跡的なことだったと思う。明仁上皇は退位後、ほぼ一切の公務から退いた。では、皇室においては、どんな存在価値があるのだろうか。

§ 尽力に感謝、経験に価値

 それは、日本の社会において、高齢者が存在する意味と同様に考えてよいだろう。
 現在の80代、90代以上の人たちは、敗戦後の日本の国土、経済、文化の復興に尽力、貢献して、それを実現してきた人たちであり、現在の平和と安定を享受できるのはこの人たちの存在による。大いに感謝したい人たちとして存在している。
 過去の活動だけかというとそうではなく、この人たちの経験を聴くことにより、多くのことを学ぶことができる。経験という大いなる価値を有している人たちである。

§ 安定した社会を実感

 それでは、先の香淳皇后のような状態になったらどうか。価値がないかというと、そうではない。その人たちが平安に暮らしていることが、私たちの社会が安定した社会であることを証明しているのだ。その人たちは、私たちが安定して人生をまっとうできる社会にいることを実感する契機としての役割を果たしている。

§ まだまだ意味大きい

 実際には、上皇、上皇后は、退位したといってもさまざまに活動している。活動の一端が知れれば、人々に影響も与える。今回の地方訪問もそうで、日本の尼門跡という存在を知るきっかけになった。尼門跡は、ほとんどの人にとってはどうでもいい話だろうが、そのことで、なにかを触発された人がいたかもしれない。
 地方訪問に限らず、また特定の話題に限らず、単に上皇、上皇后の存在を意識するだけでも、平成の、さらには昭和の、はたまた歴史的な皇室のありようを思い起こすことになる。
 上皇、上皇后が皇室に存在する意味はまだまだ大きいと私は思う。
 (2023.5.21 皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽5月12日(金曜)
【天皇・皇后】全国植樹祭式典出席などのため6月3~4日に岩手県を訪問すると宮内庁が発表。東日本大震災の被災地訪問は即位後初
▽5月16日(火曜)
【天皇】皇居内の生物学研究所の脇にある水田で田植え
▽5月18日(木曜)
【皇后】名誉総裁を務める日本赤十字社の全国赤十字大会に出席(東京都渋谷区の明治神宮会館)

上皇 上皇后

▽5月14日(日曜)
【上皇・上皇后】京都府と奈良県を私的に旅行するため新幹線の臨時専用列車で京都入り
▽5月15日(月曜)
【上皇・上皇后】尼門跡寺院の大聖寺(だいしょうじ)を訪問。修復を終えた昭憲皇太后のドレス「大礼服」を鑑賞
▽5月16日(火曜)
【上皇・上皇后】京都御苑の建礼門近くで「葵祭」の行列を観覧。近鉄の臨時専用列車で奈良県入り
▽5月17日(水曜)
【上皇・上皇后】尼門跡寺院の中宮寺(斑鳩町)を訪れ本堂で拝礼。その後、天理市の「なら歴史芸術文化村」を訪問
▽5月18日(木曜)
【上皇・皇后】新幹線の臨時専用列車で帰京

秋篠宮家

▽5月13日(土曜)
【佳子内親王】「第32回森と花の祭典『みどりの感謝祭』」の式典に出席(東京都千代田区のイイノホール)
▽5月18日(木曜)
【秋篠宮の紀子妃】日本赤十字社の全国赤十字大会に出席

宮家

▽5月18日(木曜)
【常陸宮の華子妃】日本赤十字社の全国赤十字大会に出席
【三笠宮の寛仁親王の信子妃】日本赤十字社の全国赤十字大会に出席
【高円宮の久子妃】日本赤十字社の全国赤十字大会に出席

一般

▽5月15日(月曜)
【タイ】14日下院(定数500)総選挙が行われ、15日までの開票結果では王室改革を訴える革新系野党「前進党」が151議席で第1党、タクシン元首相派の野党「タイ貢献党」が141議席で第2党。両党で292議席と過半数を獲得
▽5月16日(火曜)
【ノルウェー王室】16日までに国王ハラルド5世(86)が退院したとツイッターで発表。王室は8日、感染症による国王の入院を発表していた
▽5月18日(木曜)
【英王室】英財務省は18日、エリザベス女王の国葬関連費用が推計約1億6170万ポンド(約278億円)だったと明らかにした

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(4月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(4月~)】

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL

これまでの【皇室の話題】

▽英国と日本、神さまと王権との関係の違いは(2023年5月5日~11日)
▽天皇・皇族を縛る〝掟(おきて)〟とは(2023年4月28日~5月4日)
▽雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)
▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)
▽愛子内親王の和歌に注目集まる(2023年1月20日~26日)