西麻布交差点から外苑西通りを広尾の方へ少し行くと、異彩を放つレンガ造りの外観のビルが見えてきます。かつてここには「J.men’s TOKYO」という男性レビューの店があり、バブルの時代のちょっとしたホットスポットでした。そして、その建物の壁面には、英国の奇才グレイソン・ペリーさんの作品があったのでした。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ 古代から中世……時代を想起させるアート作品
ファンタジーを連想させる建物の横には塔のようなのが建っています。
壁面の装飾が刺激的です。
入口の横にみえるオレンジ色の柱のようなところにアートワークがあります。2階部分まで続いています。
てっぺんを見上げてみると。
人物がこちらを見下ろしています。両手を広げた人物の下にアイコンのようなオブジェが連なっています。古代から中世、それから……。時代を想起させる意匠です。
一番下に作者の標識がありました。
§ 英国の奇才
グレイソン・ペリーさん(Grayson Perry)とはどんな人なのでしょう。
1960年生まれの現代芸術家で、花瓶や絵画、版画などのグラフィックス、タペストリーや刺しゅうなどのテキスタイルを制作しているようです。
グレイソン・ペリー – Wikipedia
Grayson Perry – Wikipedia
幼少期から好んで女装をしていたそうで、偏見やファッションについて分析。『男らしさの終焉』という本を2016年に出版しています。奇才と言っていいでしょう。2015年にロンドン芸術大学の総長に就任しています。
University of the Arts London
対談のクリップに「チャンセラー」として出てきます。
§ バブル期のホットスポット
かつてここには「J.men’s TOKYO」というお店がありました。「男性のレビュー」というように紹介されています。男性が舞台にコスチュームを着て登場し、音楽に合わせてだんだんとストリップして、最後は肉体美をあらわにし、それをご婦人たちが観て楽しむという趣向だったようです。
開店は1990年。バブル期の末期でしょうか。たいへんな人気があり、はとバス観光ツアーの立ち寄り先になったこともあるようです。
ショーの舞台にお客さんが上がることもあったようですし、幕間には、お客さんのいるところを歩く男性のショーツに、女性がチップを入れるという慣わしがあったようです。
その当時、「J.men’s TOKYO」に行ったことはありませんが、向かい側のビルにあるバーに何度か行くことがありました。そこのバーのマダムによると、「J.men’s」のビルの周囲には、朝になると、プラスチック製品がたくさん散らばっていたのだそうです。
§ 不思議な装飾
向かって右側のビルが「The Wall(ザ・ウォール)、左側の塔のようなのが「Art Silo(アート・サイロ)」という建物で、いずれも英国の建築家ナイジェル・コーツさんという人の作品。ザ・ウォールが1990年、アート・サイロが1993年の竣工ということですから、「J.men’s」はできた当初からあったのでしょう。
Nigel Coates — Furniture, luxury interiors, architectural design
Nigel Coates (architect) – Wikipedia
建物全体にわたってていねいな仕掛けが施されており、どこかしら中世のお城の雰囲気が漂います。
ナイジェル・コーツさんも奇才といってよい人物でしょう。札幌にも魅力的な作品があるようです。
ナイジェル・コーツ作「ノアの箱舟」鑑賞する!|舛田光洋マスダミツヒロ (note.com)
グレイソン・ペリーさんのバイオグラフィを見ると、目立って活躍するのは今世紀に入ってから。せいぜい1990年代からです。ウィキペディアでの個展の記載は2002年のアムステルダムが最初、金沢の21世紀美術館での個展は2007年です。
1989年の時点で、彼の作品をフィーチャーしたことに敬服します。
参照サイト:西麻布 イギリスの建築家ナイジェル・コーツのThe WallとArt Silo|歩いて知った 麻布ガイド
§ 西麻布の異彩を放つ建物のまとめ
東京でもどこでも、バブル時代をしのばせる建物がたくさん残っています。ザ・ウォールもその一つ。でも、独特の魅力を感じさせ、これからも眺めてみたいと思うビルです。何かを発見した気分。きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】これまでの「西麻布で散歩」
◇西麻布の味わい深い焼き肉屋さん『胡同』さんへ
◇おいしい上質の焼き鳥を食べに 西麻布の『一歩』さんへ
◇戦時下のウクライナの人々の思いを感じに 西麻布のウクライナ大使館へ
◇港区にはなぜ大使館が多いのか 歴史を思い浮かべながら西麻布へ