六本木のロアビルの前を通りかかって、「なんじゃこりゃ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。ビニールのおもちゃを寄せ集めた写真のような図柄が、工事の借り囲いにずーっと続いています。敷地を囲うフェンスはこのごろいろいろありますが、これは本格的な現代アートです。さすがアートのまち六本木です。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ 既成概念を打ち破る
入口の近くの囲いはふつうですが、通りに面したところにアートがあります。
結構長い距離にわたって続いています。
アップにするとこんな図柄です。
作者名が書いてありました。
「増田セバスチャン」という人です。作品名は「Polychromatic Skin – Gender Wall -」。QRコードを読み取るとオフィシャルウェブサイトのページへ行きました。
「Polychromatic Skin -Gender Wall-」Exhibited until March 2023 [六本木にて2023年3月末まで展示中]
「Polychromatic Skin」は、直訳すれば「多色の皮膚」でしょう。ただ、皮膚の色はその下を通る血管の色でもあるでしょう。身体の内部との関係性があります。
増田セバスチャンさんの中心的なテーマになっているようで、その作品がたくさんあります。
ウェブサイトでは「《Polychromatic Skin》はジェンダーに代表される自由と平和の前に立ちはだかる無意識下の固定観念を突き破る・解放する作品シリーズです」と説明されています。よく分かりませんが、とりあえず、固定観念を打ち破ろうということなのでしょう。
§ カワイイ文化が世界に知られるきっかけ
1970年生まれ。 1990年代前半より演劇や現代美術に関わり、現在は東京とニューヨークを拠点にアート、ファッション、エンターテインメントの垣根を越えた作品を制作しているとのこと。
きゃりーぱみゅぱみゅさんの「PONPONPON」MV美術、KAWAII MONSTER CAFEプロデュースなど、世界にKawaii文化が知られるきっかけを作った人だそうです。
2019年に『Newsweek Japan』の世界が尊敬する日本人100人に選ばれています。
増田セバスチャン先生 が「世界が尊敬する日本人100」に選出されました! | 情報デザイン学科 京都芸術大学
§ トイレの張り紙
2022年の9月17日から19日には「Polychromatic Skin」の-Gender Wall-が今と同じ場所に展示され、六本木交差点には柱のような-Gender Tower-が展示されました。
カラフルな色がせめぎ合うような作品は各地に展示されています。
参加者が衣装を身につけることで作品に参加するイベントも開かれているようです。興味深いですね。
増田セバスチャンさんが2018年、ニューヨーク・ブルックリンのクラブでトイレに入ろうした時のこと、2つのドアにあるはずの男性・女性を意味するサインが潰され、『non-gender』という張り紙がありました。トイレの様子やクラブの様子など、その時の困惑した体験が作品の背景になっているようです。
それ以来、「自分の中の固定観念をどうにか壊すことはできないのか?」とずっと考えているとコメントしています。
§ ロアビルは解体される?
ところでロアビルは工事中なのでしょうか。報道によると解体されるようです。きっかけは耐震診断結果が芳しくなかったことといいます。現在もテナントが入っており、いつどんな工事があるのかは分かりません。それまでの間は囲いに別のアートが登場するかもしれませんね。
六本木ロアビルが姿を消さざるを得ない事情 | 東洋経済オンライン
§ ロアビルの囲いのまとめ
増田セバスチャンさんはインタビューで「『カワイイ』は日本人が元々持っている感性」と話しています。
増田セバスチャンさんインタビュー 衝撃的な「カワイイ」でみんなを驚かせて、生きていきたい|好書好日
日本人は「モノに対しての思い入れが強い」「具象化して愛でて、なごんだり優しくなれたりするのは、日本人に特化した感性」と言います。そう聞くと、ビニールおもちゃの背後に、何か別のものが見えて来るような気がします。きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】これまでの「六本木で散歩」
▽芸術としてのベンチとベンチとしての芸術 六本木・けやき坂へパブリックアートを見に行く
▽若手アーティストの壁画を見に 六本木へ
▽ビルの谷間の神域 六本木・麻布でタイムスリップする
▽大画面の壁画の迫力 赤坂・六本木の地下鉄駅へ
▽雨に消える透明な椅子 六本木・けやき坂のパブリックアート
【 JAARAで散歩】これまでの「六本木・西麻布で食べ飲み」
▽点心を心おきなく 六本木の『歩高里(ブルゴーニュ)』さんへ
▽オーガニックワインと十割蕎麦 六本木の『莉々庵』さんへ
▽食事メインでお酒もお手頃 六本木の『蕎麦六本』さんへ
▽おいしい上質の焼き鳥を食べに 西麻布の『一歩』さんへ
▽六本木の気楽な居酒屋さん 『松ちゃん』へ