青山通りの青山学院大の向かいに、かつて「こどもの城」がありました。さまざまな遊びができる場所でした。2015年に閉館しましたが、建物の前に岡本太郎さん作のモニュメント「子どもの樹(き)」が今でも立っています。木の枝の先に花開いている子どもたちひとりひとりは、それぞれの自分の顔で、何かを語りかけているようです。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ いろんな顔、岡本太郎さんらしい顔
「こどもの樹」は、1985年の「こどもの城」開館と同時に設置。高さ7・5メートル、幅5・2メートルで、太い幹から表情豊かな顔がいくつも飛び出しており、文化や人種を越えた子どもの姿を表しているとのことです(川崎市岡本太郎美術館)。
岡本太郎作品の「こどもの樹」、都が残す方針表明:朝日新聞デジタル
川崎市岡本太郎美術館HP
こどもの樹には15の顔が付いています。勝手に分類してみました。
一番多いのは笑っている顔です。
すましている顔や、おどけている顔、はっとしている顔があります。
岡本太郎さんらしい顔もありました。
§ 糸井重里さんが一番好きな岡本太郎
糸井重里さんはほぼ日刊イトイ新聞の記事の中で、「ぼくがいちばん好きな岡本太郎は、青山の子どもの城の前にある『こどもの樹』なんですよ」と語っています。
記事は岡本太郎さんの生涯のパートナー、敏子さんへのインタビュー。とっても面白い記事です。
ほぼ日刊イトイ新聞 – なんだ、これは!
―岡本太郎は生きている―TAROのコトダマ。第1回 もしもあそこに「こどもの樹」がなかったら?
面白い記事なので読んでいただきたいと思います。少し紹介すると、敏子さんは次のように言っています。
「子どもというのはひとりひとりがみんな、こういう独自の、自分の顔を持ってなきゃいけないんだぞ」って、岡本太郎は伝えたいわけ。
親や先生は、みんな一緒に、隣の子とおんなじならいい、っていうように、ひとりひとりの子を抑えちゃうじゃない?だから、あの「こどもの樹」は、親や先生やお役人たちに対する、強烈なメッセージなのよね。
§ 生命を感じる存在、ひとつひとつ違う
私としては、この「こどもの樹」、植物なんだけど、血肉が流れているようにも感じます。手塚治虫さんの「火の鳥・宇宙編」に出てくる「植物にメタモルフォーゼした人間」を思い出します。
樹木、植物は、花を付けたり果実を付けたりして、あるいはそんなことをしなくても、存在するだけで生命を感じさせてくれます。それは人間も同じだということ。特に子どもはそんな存在だよね、と思います。
もう一つ、「こどもの樹」にいろんな顔があること。哲学者のハンナ・アレントが「それぞれの人間の違いこそ、人間をかけがえのないものにしている」と言っているらしいので、それを思います。
アレントは世界大戦、大量殺戮について考え続けた人のようです。そして、人間は、人種や宗教が違っても同じ人間であることを認め合い、それとともに、お互いに違っているたった一つの存在で、取り替えがきかないことを認め合う、ということを目指したらしい。それにつながるような気がします。
§ 気になる今後の行方
こどもの樹が建てられた「こどもの城」は1979年の国際児童年を機に構想され、1981年に着工、1985年に開館しました。
運動や造形、音楽、ゲームなど、さまざまな遊びを子どもたちに提供していたそうです。また、劇場やホテル、研修室、クリニックなどがある複合施設でした。
こどもの城Webライブラリー
こどもの城 – Wikipedia
老朽化などのため閉館後の2019年に東京都が土地・建物を取得、2020年に改修の計画を策定しましたが、コロナ禍などのため断念。あらためて検討するようです。
周囲を見ると、近くのビルの側面に模様が描いてありました。
それを見ていて、旧こどもの城の建物の壁に「何か」があるのに気づきました。
子どもが縄跳びをしているのでした。この子もいずれ、どこかに行ってしまうのかなあ。
こどもの樹は、縄跳びとリズムを合わせてダンスしているようにも見えるんだけど。
§ こどもの樹のまとめ
「こどもの樹」は岡本太郎さんらしい作品でした。そして、何かを語り掛けてくれているようでした。これからも青山通りにいてくれればまた行けるな、と思いました。きょうもいい一日になりそうです。
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