【皇室の話題】天皇の地方訪問のやり方の変化は、目的の変化から(2022年7月8日~14日)

         


 
 (この記事は2022年の出来事についての記事です)
 天皇、皇后は5月5日の「こどもの日」にちなみ、7月8日、青森県むつ市の認定こども園「よしのこども園」をオンラインで訪問、利用者と交流した。天皇、皇后の地方訪問はかつてはもちろん「リアル」だったが、このごろは「リモート」もありである。昭和、平成、令和と移り変わった天皇の地方訪問について考えてみたい。

¶ 天皇の地方訪問は目的が変化してきた

 天皇、皇后が各地を訪問する時、その振る舞い方は昭和、平成、令和と変遷してきた。最も大きな変化は明仁天皇が打ち出した「国民と共に」という考えであろう。訪問の目的の重点が「儀式に出席すること」から「国民と触れ合うこと」に移ったことで、行動ややりかたに変化が生じた。令和にも変化が生じている。

§ 威厳のある立派な存在

 昭和天皇が地方を訪問する主な目的は「儀式に出席すること」だった。それは戦前も戦後も変わらなかったと思う。
 天皇が臨席する儀式は、ものすごくたいへんな儀式である。だから、そこでは天皇は、ものすごくたいへんな儀式に臨む存在、威厳のある立派な存在だった。
 それゆえ、乗っている車はセダンよりリムジンの方がいい。儀式に臨むのが目的なので、ほかの人とご飯を食べる必要はない。自分だけで、あるいは皇后と2人でご飯を食べた。

§ 国民と触れ合うのがほぼ主目的

 平成の天皇、皇后の場合は、式典出席もさることながら、国民と触れ合うことがほぼ、主目的となった。
 それゆえ、移動の際の車は、国民と目の高さが近くなるセダンに乗り、ご飯は訪れた土地の人々を交えて、一緒にお話ししながら食べる。

§ デジタル時代のやり方

 令和の場合は、平成と目的はほぼ同じだが、コロナ禍でリアルに地方訪問をすることが、ある時期、できなくなった。そこでリモート訪問が取り入れられた。
 リモートで「訪問」というと、デジタルに疎い私は違和感を覚える。結婚式の御祝儀や神社のお賽銭をスマホの決済サービスで払うような違和感である。だが、このごろの若い世代はそんなことに違和感を抱かないのであろう。

§ 人が社会と調和する時のキーコンセプト

 平成の天皇、皇后が国民との触れ合いを重視する時、国民に示したメッセージの一つが「ヒューマニズム」だったと思う。
 核家族化が進んで世代間の交流はなく、家郷喪失の時代に家族、個人はそれぞれ孤立する。子どもは成長するにしたがって「受験戦争」に直面し、エコノミックアニマルの親と同様、し烈な競争の中に身を置く。
 このような社会への不安、反発を覚える時、安心させてくれるのが「ヒューマニズム」だったのではないか。平成の時代とそれに先立つ昭和の時代、人が社会と調和を図る時にすがったキーコンセプトが「ヒューマニズム」だったのだと思う。

§ 社会は変化で地方訪問はどうなる

 現代の社会は変化を続けている。競争の原理を「ヒューマニズム」で乗り越えることができなくなってきている。その時、人が社会と調和を図る時にすがるキーコンセプトは何か。天皇はどうとらえるか。それによって、天皇と私たちの関係も変化するのだろう。
 (皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽7月8日(金曜)
【天皇・皇后】5月5日の「こどもの日」にちなんだ行事として、青森県むつ市の幼保連携型認定こども園「よしのこども園」の利用者とオンラインで交流(皇居・御所)
 ■天皇后陛下 青森県 認定こども園とオンラインで交流|NHK 青森県のニュース
▽7月11日(月曜)
【天皇・皇后】安倍晋三元首相の通夜会場の増上寺(東京都港区)に花を贈り、焼香のために侍従を派遣。宮内庁次長は定例記者会見で死去について、天皇・皇后が「大変残念に思い、心を痛めておられ、ご遺族の皆さまの悲しみを案じていらっしゃるのではないかと拝察をしている」と述べ、上皇・上皇后も「お悔やみのお気持ちをお持ちであるというふうに拝察する」とした
▽7月12日(火曜)
【皇后】紅葉山御養蚕所で今年の養蚕作業の締めくくりとなる「御養蚕納の儀」に臨んだ
▽7月14日(木曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】宮内庁は天皇、皇后と愛子内親王が皇居内の紅葉山御養蚕所で養蚕作業に取り組んだ様子の写真5枚を公開。撮影は5月19日、6月1日と6月11日

秋篠宮家

▽7月8日(金曜)
【紀子妃】総裁を務める恩賜財団母子愛育会が主催する「第54回愛育班員全国大会」の式典に出席(東京都港区の明治記念館)
▽7月13日(水曜)
【佳子内親王】全国都市緑化祭の記念式典に出席(北海道の恵庭市総合体育館)
▽7月14日(木曜)
【紀子妃】松山市で開催された「第58回献血運動推進全国大会」の式典に、東京都港区の日本赤十字社本社からオンラインで出席

宮家

▽7月12日(火曜)
【三笠宮の百合子妃】風邪気味のため、東京都中央区の聖路加国際病院を受診し、大事を取って入院。宮内庁が発表
▽7月13日(水曜)
【三笠宮の百合子妃】新型コロナウイルスに感染したと宮内庁が発表。皇室で感染は2人目
 

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和4年(7月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和4年(7月~)】

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL

このほかの【皇室の話題】

▽天皇の〝本質〟とは何か、それは誰によって形作られるのか(2023年6月2日~8日)
▽皇室は伝統文化継承の担い手(2023年5月26日~6月1日)
▽天皇の存在を国民に印象付ける活動の場面とは何か(2023年5月19日~25日)
▽上皇、上皇后が皇室に存在する意味とは(2023年5月12日~18日)
▽英国と日本、神さまと王権との関係の違いは(2023年5月5日~11日)
▽天皇・皇族を縛る〝掟(おきて)〟とは(2023年4月28日~5月4日)
▽雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)
▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)