¶ 園遊会は皇室が国民と接し、国民を知るチャンス
ことしの秋の園遊会が11月2日に元赤坂の赤坂御苑で開催されることになった。秋の園遊会は2018年以来である。園遊会は、日本の外交政策として始まった「観菊会・観桜会」が源流。昭和の園遊会は皇室と国民との接点となり、平成時代には皇室が市井と接し、市井を知るよすがにもなった。令和の園遊会はその延長上にあるだろう。
§ 条約改正の促進が源流
園遊会の源流は1880年(明治13)11月に始まった「観菊会」と、翌年から始まった「観桜会」という。皇室外交で条約改正を促進する意図があったという。
その後は、外交官との交際と共に、広く国民を招いて皇族と接する場にもなった。
昭和3年(1928年)の観桜会は新宿御苑で開かれた。『昭和天皇実録』の同年4月17日の記事によると、この際に招待したのは1万人以上、当日の参加者は7200人に上っている。
昭和天皇はいろいろな市井の人と話す機会を求めていたようだ。昭和4年11月12日の条には、次のような記事がある。
実録の記事を読むと、外交団の人たちとは全員と握手し、大使、公使には言葉をかけ、日本人も高官らに会釈をしていたようだが、もっと別の人とも話したかったのだろう。
§ 国民と接し、国民を知る
戦後は昭和28年(1953年)から園遊会が始まった。このところは春と秋、それぞれ2千数百人ほどが招かれている。
昭和天皇はいろいろな人と話ができてうれしかったことだろう。
昭和57年(1982年)春の園遊会で昭和天皇が、ロサンゼルス五輪の金メダリスト、山下泰裕さんに「柔道で一生懸命やっているようだがね。どう、ずいぶん骨が折れますか」と聞き、山下氏が「2年前に骨折したんですけども、今は体調も完全に良く、頑張っております」と答えたのは有名なやりとりだ。
平成の天皇は、道筋に沿って並ぶ出席者が付けている名札をよく見ていたという。誰が来ているのかを知り、自分が世話になった先、自分が気に掛けている先の人と言葉を交わそうとしたのだろう。また、自分が関心ある領域の人と会話がしたかったのだろう。
平成の天皇にとって、園遊会は国民と接するとともに、国民からさまざまなことを学ぶ機会だったと思われる。
§ 平成の延長の上に
令和の園遊会にも外交団、各界の功績者が招かれている。功績があると園遊会に招かれる。園遊会出席は、功績に対する栄誉である。
功績のない人に栄誉が与えられないのは当たり前だが、皇室のメンバーと接することができるのを栄誉と考えるのは古くさい気がする。
皇室が、園遊会を国民と接する機会ととらえるのなら、栄誉がない一般ピープルとも会えるようにするやりかたもあるだろう。
令和の園遊会がどんな変貌をするか、見ていきたい。
(2023.8.20 皇室王室勉強家・以出江 凡)
■園遊会 – 宮内庁
■最近の園遊会被招待者数 – 宮内庁
■赤坂御苑において令和になって初めての園遊会が開催されました|宮内庁HP
■観菊会(かんぎくかい)とは? 意味や使い方 – コトバンク
■観桜会(かんおうかい)とは? 意味や使い方 – コトバンク
¶ 日誌
天皇 皇后 愛子内親王
▽8月4日(金曜)
【天皇・皇后】天皇、皇后主催の秋の園遊会を11月2日に東京・元赤坂の赤坂御苑で開催すると宮内庁が発表。2019春以降見送られ今春に再開。秋は18年11月以来5年ぶり
【愛子内親王】「藤原定家-『明月記』とその書-」を見学(台東区の東京国立博物館)愛子内親王は学習院大文学部日本語日本文学科で学び、日本の古典文化に関心がある
▽8月6日(日曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】広島原爆の日に合わせ黙とう(皇居・御所)
秋篠宮家
▽8月9日(水曜)
【秋篠宮・同妃】9月下旬にベトナムを公式訪問すると宮内庁が発表。日本とベトナムの外交関係樹立50周に関連する公式行事などに出席
▽8月7日(月曜)
【紀子妃】「国際天文学連合アジア太平洋地域の天文学に関する国際会議」の開会式に出席(福島県郡山市)
上皇 上皇后
▽8月6日(日曜)
【上皇・上皇后】広島原爆の日に合わせ黙とう(東京・元赤坂の赤坂御用地にある仙洞御所)
▽8月7日(月曜)
【上皇后】2023年イタリアボローニャ国際絵本原画展を鑑賞(板橋区立図書館)
宮家
▽8月8日(火曜)
【三笠宮の寛仁親王の信子妃】非公式訪問していたハンガリーから帰国
▽8月10日(木曜)
【高円宮家の承子女王】全国高校総合体育大会のアーチェリー競技を観戦(北海道帯広市の「帯広の森陸上競技場」)承子女王は2018年から全日本アーチェリー連盟の名誉総裁
宮内庁
▽8月9日(水曜)
【政府】政府は皇室会議の皇族議員の互選を9月7日に実施すると10日付で告示
一般
▽8月4日(金曜)
【英王室】故エリザベス女王の一周忌の9月8日に一般公開の公式行事を行う予定はないと明らかに。チャールズ国王が「静かに私的に」過ごして母を追慕する
▽8月5日(土曜)
【カンボジア王室】7月実施の下院選で与党カンボジア人民党が125議席中120議席を獲得と選管が発表。フン・セン首相(71)の長男フン・マネット氏(45)が世襲して新首相となる内閣の発足が確定的に。残る5議席は王党派政党「民族統一戦線(FUNCINPEC)」が獲得。ノロドム・シアヌーク前国王の2男のノロドム・ラナリット元首相(2021/11/28没)の長男ノロドム・チャクラブット王子が党首として初出馬。現国王はシアヌークの4男ノロドム・シホマニ氏
▽8月7日(月曜)
【カンボジア王室】シハモニ国王は7日、下院選の結果を受けフン・セン氏(71)の長男フン・マネット氏(45)を次期首相に指名した。新内閣は22日にも発足の見通し
¶ 関連サイト
宮内庁HP
【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(7月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(7月~)】
メディア
皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
【皇室の話題】
▽悠仁親王に必要な教育とはなんだろうか(2023年7月28日~8月3日)
▽ナイチンゲール記章の授与はやっぱり皇后?(2023年7月21日~27日)
▽皇后が皇居で養蚕をする意味はなんだろう(2023年7月14日~20日)
▽天皇が体現する価値を決めているのは誰か(2023年7月7日~13日)
▽淡々とした事実を物語にしてしまう天皇(2023年6月30日~7月6日)
▽天皇、皇族が国際的にも「いい人」である理由(2023年6月23日~29日)
▽天皇のスピーチが記者会見のようだった違和感(2023年6月16日~22日)
▽天皇が担う新しい時代の国際親善とは(2023年6月9日~15日)
▽天皇の〝本質〟とは何か、それは誰によって形作られるのか(2023年6月2日~8日)
▽皇室は伝統文化継承の担い手(2023年5月26日~6月1日)
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