【皇室の話題】園遊会は皇室にとってどんな意味があるのか(2023年8月4日~10日)

         


 

¶ 園遊会は皇室が国民と接し、国民を知るチャンス

 ことしの秋の園遊会が11月2日に元赤坂の赤坂御苑で開催されることになった。秋の園遊会は2018年以来である。園遊会は、日本の外交政策として始まった「観菊会・観桜会」が源流。昭和の園遊会は皇室と国民との接点となり、平成時代には皇室が市井と接し、市井を知るよすがにもなった。令和の園遊会はその延長上にあるだろう。
 

§ 条約改正の促進が源流

 園遊会の源流は1880年(明治13)11月に始まった「観菊会」と、翌年から始まった「観桜会」という。皇室外交で条約改正を促進する意図があったという。
 その後は、外交官との交際と共に、広く国民を招いて皇族と接する場にもなった。
 昭和3年(1928年)の観桜会は新宿御苑で開かれた。『昭和天皇実録』の同年4月17日の記事によると、この際に招待したのは1万人以上、当日の参加者は7200人に上っている。
 

この度の観桜会には、外国交際官、文武諸官のほか、特に民間功労者として白石元治郎(実業家)ほか三百二十五名、外国新聞通信員及びその家族三十三名等をお召しになり、参苑者は皇族・王公族三十二方、国内一万二千五百人、外国人四百人に達する。このうち当日参苑した者は合計七千二百人余りに上る(『昭和天皇実録』昭和3年4月17日)

 
 昭和天皇はいろいろな市井の人と話す機会を求めていたようだ。昭和4年11月12日の条には、次のような記事がある。
 

夕刻、侍従木下道雄に対し、観菊会・観桜会につき、各方面知名の人士が召されるにもかかわらず、宴そのものが儀式化されているため接する機会がなく、今後、知名の人士と談話の機会を設けることの可否について御下問になる。木下より、観菊会・観桜会の目的は数千の人士に拝顔の栄を与え、かつ名苑拝観の楽しみを頒つことにあり、席次を顧みず特定の個人・団体のみを特に厚く取り扱うことは不可能と考える旨の奉答を受けられる。これに対し、吹上御苑内に新設予定の御茶屋に身分上宮中に参入できない社会事業家・教育家・実業家・新聞人等を招くなど、別の機会を設けてその話を聞くことにつき、意見を求められる。木下は、昔諸藩の名君においては、殿中に召すことが出来ない身分の俊傑を招いたり、百姓を集めて里言を聴くため、殿外の庭園に御茶屋を設けたと聞く旨を言上する。よって、将来こうした機会を設けることを研究するよう命じられる(『昭和天皇実録』昭和4年11月12日)

 実録の記事を読むと、外交団の人たちとは全員と握手し、大使、公使には言葉をかけ、日本人も高官らに会釈をしていたようだが、もっと別の人とも話したかったのだろう。
 

§ 国民と接し、国民を知る

 戦後は昭和28年(1953年)から園遊会が始まった。このところは春と秋、それぞれ2千数百人ほどが招かれている。
 昭和天皇はいろいろな人と話ができてうれしかったことだろう。
 昭和57年(1982年)春の園遊会で昭和天皇が、ロサンゼルス五輪の金メダリスト、山下泰裕さんに「柔道で一生懸命やっているようだがね。どう、ずいぶん骨が折れますか」と聞き、山下氏が「2年前に骨折したんですけども、今は体調も完全に良く、頑張っております」と答えたのは有名なやりとりだ。
 平成の天皇は、道筋に沿って並ぶ出席者が付けている名札をよく見ていたという。誰が来ているのかを知り、自分が世話になった先、自分が気に掛けている先の人と言葉を交わそうとしたのだろう。また、自分が関心ある領域の人と会話がしたかったのだろう。
 平成の天皇にとって、園遊会は国民と接するとともに、国民からさまざまなことを学ぶ機会だったと思われる。
 

§ 平成の延長の上に

 令和の園遊会にも外交団、各界の功績者が招かれている。功績があると園遊会に招かれる。園遊会出席は、功績に対する栄誉である。
 功績のない人に栄誉が与えられないのは当たり前だが、皇室のメンバーと接することができるのを栄誉と考えるのは古くさい気がする。
 皇室が、園遊会を国民と接する機会ととらえるのなら、栄誉がない一般ピープルとも会えるようにするやりかたもあるだろう。
 令和の園遊会がどんな変貌をするか、見ていきたい。
 (2023.8.20 皇室王室勉強家・以出江 凡)
 
 ■園遊会 – 宮内庁
 ■最近の園遊会被招待者数 – 宮内庁
 ■赤坂御苑において令和になって初めての園遊会が開催されました|宮内庁HP
 ■観菊会(かんぎくかい)とは? 意味や使い方 – コトバンク
 ■観桜会(かんおうかい)とは? 意味や使い方 – コトバンク
 

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽8月4日(金曜)
【天皇・皇后】天皇、皇后主催の秋の園遊会を11月2日に東京・元赤坂の赤坂御苑で開催すると宮内庁が発表。2019春以降見送られ今春に再開。秋は18年11月以来5年ぶり
【愛子内親王】「藤原定家-『明月記』とその書-」を見学(台東区の東京国立博物館)愛子内親王は学習院大文学部日本語日本文学科で学び、日本の古典文化に関心がある
▽8月6日(日曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】広島原爆の日に合わせ黙とう(皇居・御所)
 

秋篠宮家

▽8月9日(水曜)
【秋篠宮・同妃】9月下旬にベトナムを公式訪問すると宮内庁が発表。日本とベトナムの外交関係樹立50周に関連する公式行事などに出席
▽8月7日(月曜)
【紀子妃】「国際天文学連合アジア太平洋地域の天文学に関する国際会議」の開会式に出席(福島県郡山市)
 

上皇 上皇后

▽8月6日(日曜)
【上皇・上皇后】広島原爆の日に合わせ黙とう(東京・元赤坂の赤坂御用地にある仙洞御所)
▽8月7日(月曜)
【上皇后】2023年イタリアボローニャ国際絵本原画展を鑑賞(板橋区立図書館)
 

宮家

▽8月8日(火曜)
【三笠宮の寛仁親王の信子妃】非公式訪問していたハンガリーから帰国
▽8月10日(木曜)
【高円宮家の承子女王】全国高校総合体育大会のアーチェリー競技を観戦(北海道帯広市の「帯広の森陸上競技場」)承子女王は2018年から全日本アーチェリー連盟の名誉総裁
 

宮内庁

▽8月9日(水曜)
【政府】政府は皇室会議の皇族議員の互選を9月7日に実施すると10日付で告示
 

一般

▽8月4日(金曜)
【英王室】故エリザベス女王の一周忌の9月8日に一般公開の公式行事を行う予定はないと明らかに。チャールズ国王が「静かに私的に」過ごして母を追慕する
▽8月5日(土曜)
【カンボジア王室】7月実施の下院選で与党カンボジア人民党が125議席中120議席を獲得と選管が発表。フン・セン首相(71)の長男フン・マネット氏(45)が世襲して新首相となる内閣の発足が確定的に。残る5議席は王党派政党「民族統一戦線(FUNCINPEC)」が獲得。ノロドム・シアヌーク前国王の2男のノロドム・ラナリット元首相(2021/11/28没)の長男ノロドム・チャクラブット王子が党首として初出馬。現国王はシアヌークの4男ノロドム・シホマニ氏
▽8月7日(月曜)
【カンボジア王室】シハモニ国王は7日、下院選の結果を受けフン・セン氏(71)の長男フン・マネット氏(45)を次期首相に指名した。新内閣は22日にも発足の見通し
 

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(7月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(7月~)】
 

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
 

【皇室の話題】

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▽淡々とした事実を物語にしてしまう天皇(2023年6月30日~7月6日)
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▽天皇が担う新しい時代の国際親善とは(2023年6月9日~15日)
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