テーマを理解して表現しているか、が高得点のカギ 第10回全日本小中学生ダンスコンクール 2022年東日本大会(学校参加の部 中学生部門)

         

 13日、東京の新宿文化センターへ第10回全日本小中学生ダンスコンクール 2022年東日本大会の学校参加の部、中学生部門(午前・午後)を観に行ってきました。審査員の先生方の講評を聞くと、ダンサー一人一人が作品のテーマを理解して表現しているかどうか、とうところに大きなポイントがあるように思いました。それが高得点のカギといってもいいでしょう。コンクールに臨むチームとしては、テーマのイメージを明確にし、それを振り付け・構成に落とし込んでいくというプロセスが必要になると思います。このコンクールは朝日新聞社主催、キューピー協賛。

§ タイトル重視

 このコンクールはテーマ――それを表したタイトル――を重視したコンクールです。各チームがエントリーする際に、作品の「タイトル」を求めているところがほかとは異なる特徴です。審査基準が①作品点 ②技能力 ③表現力 ④チーム力 ⑤印象点―と5項目ある中で、「作品点」は「タイトル(テーマ)と選曲、振り付け、構成が合っているか」が要素となっており、「表現力」では「タイトル(テーマ)に沿って気持ちを込めた表現ができているか」が評価されるとしています。つまり、「タイトル(テーマ)」が設定されていることが前提条件です。
 
 審査員のフィッシュボーイさんは「振り付けをみんなで作って踊るにしても、振付師が作ったものを踊るにしても、みんなでその作品のテーマについて、踊る前に話し合ってみよう。それが表現力、チーム力につながる」と話していました。チームのメンバー一人一人が作品のテーマ、イメージを共有し、それに近づくように踊っていくという過程を踏めば、いい発表につながるというわけです。

§ テーマ設定のいろいろ

 出場校の演技の中には、物語性のある作品がありました。動物との交流、失恋からの回復、主演を目指すバイプレーヤー、中枢がマヒしたAI…など。いわば、ミュージカルやバレエの一場を2分半で見せようとする手法です。おのずとテーマが定まってきます。
 
 また、具体的な「もの」をタイトルにした作品もありました。白虎、スパイダー、桜梅桃李…など。音楽でいえば「標題音楽」といったところでしょう。具象のありようやイメージを身体で表現していくことになります。
 
 「友情」や「信頼」、「私が私であること」といった抽象的な内容をテーマにする場合は、イメージの確定、身体表現への落とし込みにいっそうの工夫がいることになります。

§ 明確なイメージ

 クラシック音楽では、楽曲の形式を作品の呼称とすることが多いでしょう。単に、フーガ、カノン、ソナタ、シンフォニー…の第何番というように。音楽は言葉を離れて、音楽による表現、音楽でしか伝えられないものを音楽で伝える、ということなのでしょう。ダンスは身体表現芸術なので、身体表現でしか伝えられないものを伝えるのであって、言葉の助けはいらない、というのが王道かもしれません。
 
 そうはいっても、そこに言葉が介在しないとイメージをつかむことが難しいのも事実です。審査員の先生は「自分がいま、どれくらいのことができているかを確認しながら練習しよう」ともおっしゃっていました。自分がどのくらいできているか振り返ろうとするとき、言葉によるイメージを基準にすればやりやすいでしょう。ダンサーに平易で明確なイメージを与えることで、表現力、チーム力が高まるというわけです。

§ まとめ

 小中学生のダンスの在り方、小中学生のダンスの楽しみ方、それはさまざまで、どれが優れていて、どれが評価されるべきかなど、決まりがあるはずはありません。とはいえ、コンクールは一つの基準です。コンクールは、おおぜいの人、おおかたの人が認める基準になります。おおかたの人の認める基準を満たそうとすれば、よりうまく、より楽しくなるでしょう。そんな中で、全日本小中学生ダンスコンクールに臨むのであれば、まずテーマ・タイトを決めてイメージを確立し、それをつねに意識しながら、練度を高めていくことになるのでしょう。