日本人の女性舞踊家がフランスの国立演劇センターの次期トップに 【ダンスとコレオ】

         

 日本人の舞踊家の女性が、フランスの国立演劇センターのトップになるというニュースがありました。伊藤郁女(いとう・かおり)さんという人です。ダンスのことをよく知らないので初めて聞く名前です。どうも、フランスのダンス界ではたいへん重要な存在なのだそうです。

§ 身体能力と独特の動き

 フランス文化省の2022年9月28日の発表によると、伊藤郁女さんは、フランス東部にある、ストラスブール・グランテスト国立演劇センター「TJP Centre Dramatique National」のトップ、ディレクターに2023年1月1日に就任するとのことです。
 どんな人なのでしょう。ということでYouTubeをさがしました。
 画像がよく見えるのはこれでしょうか。伊藤さんのHPに出てきます。
 Religieuse à la fraise – Kaori (kaoriito.com)


 身体能力が高く、飛び跳ねるような、激しい、独特な動きがあります。演劇的な要素もあります。
 次の映像もありました。

§ フランスでの存在感

 Wikipediaを探すと、日本語のページがありません。「Kaori Ito」で5つの言語のページがありました。英語、フランス語、スペイン語、アストゥリアス語(スペインのアストゥリアス州で話されるロマンス諸語のひとつ)、アラビア語です。フランス語のページ英語のページの3倍くらいの記述があります。

§ 海外での研鑽と積極的な活動

 彼女は1979年、芸術家一家に生まれたようです。お父さんは彫刻家。10代で英国に渡り、その後アメリカや日本で学び、2003年からフランスに定住。
 さまざまな振付家に積極的にアプローチして作品を作ってきた人のようです。フランスの劇作家作曲家協会から振付賞を受け、芸術と文学の勲章を受章しているということです。
 森山未來さんとも2018年に一緒に公演しています。
 伊藤郁女・森山未來が出演する『Is it worth to save us?』がKAAT神奈川芸術劇場にて開幕 (eplus.jp)

§ ストラスブールの土地柄

 ストラスブールは、フランス東部アルザス地域の中心都市。ここに「ストラスブール劇場」があります。狭い意味での国立劇場としては、ストラスブール劇場はフランスでパリ以外の地にある唯一の国立劇場ということです。国立演劇センターはフランス各地に30か所ほど点在しているようです。
 ストラスブール劇場は、国を挙げての文化国家づくりというコンセプトの下、演劇を通してアルザス文化圏に「正統な」フランス語文化を植えつけようという政治的な意図から造られたのですが、地方分権的なドイツの公共劇場から生まれたドラマトゥルク(戯曲のリサーチ・分析などの活動で演出家を助ける役割の人たち)が活躍するような劇場の姿になっていると解説されます
 さまざまな考えや活動が交錯する土地柄なのでしょう。

§ 目に見えないものとのつながり

 ダンスは私たちに私たち自身を気付かせ、私たちと他者たちとを巡り合わせ、目に見えないもの、知覚できないものと私たちをつなぐ。というとらえ方があります。何がなんだかよく分からなくなりますが、そうした方向の上に、伊藤さんのダンスがある、と評価されているのではないでしょうか。深遠ですね。

§ 伊藤郁女さんのまとめ

 世の中に、知らないことは多いものです。彼女はフランスで非常に高い評価を得ているのでしょう。まさに時代の先端。世界で活躍している日本人がいるのですね。ダンスの多様性が広大であることにも気付かされました。いろいろなダンスを見ていきたいなあ、と思いました。