この休みはどこかへ散歩に行きますか。それなら北青山のブラジル大使館へ行くのはどうでしょう。大きなストリートアートが建物の前に描かれています。大地、母、女性のモチーフからは、世界の広がり、人の温もり、生きる誇り、さまざまな思いが伝わります。地球の反対側の国の人々と風土に心をはせるのも良いのではないでしょうか。
神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布(JAARA)は歩くだけで楽しい街。目的があれば歩くのがいっそう楽しくなりますね。
※ JAARA(ジャーラ)は[神宮前―青山―赤坂―六本木―麻布]の街の連なりを指す造語です。
§ 静寂さと高貴さに包まれた女性
ブラジル大使館は北青山2丁目にあります。神宮外苑の方から歩いてくると、壁になにやら女性の絵が描いてあるのが見えてきます。
湖水のように広がる水のほとりに女性が立っています。頭部にあるのは聖人の光輪かと思いきや、髪飾りでしょうか。手には光を載せています。
近づくと、子どもたちの乗ったボートを支えているようです。
道を進むと、子どもを抱っこした母親が見えてきます。
壁の曲面が回り込んだところには、もう一人、女性が立っています。この人も手に光を載せています。
半身が水に浸かっているように見えます。
描かれている風景全体に陰翳があります。けれども静寂があります。高貴さがあります。
§ 風土の原点
この作品を描いているのは、サンパウロを拠点に活躍するビジュアルアーティスト、ハンナ・ルカテッリさんです。
この人のインスタグラムを見ると、女性をモチーフにした作品が印象的です。
ブラジルは先住民がいるところへヨーロッパの人が侵入してきた歴史があります。そうした風土の原点を感じさせます。
HANNA LUCATELLI SANTOS• Instagram
建物の壁面な巨大な母親像を描く動画がありました。
絵の左上には「amai vos」(I love you)と書いてあります。
こちらは室内で制作している動画です。
§ 大胆な曲線と前面に押し出る壁
ブラジル大使館は、ルイ・オオタケさんという人の設計です。
ルイ・オオタケさんは1938年生まれ。サンパウロ大学都市建築学部(FAU)を卒業し、ブラジルで活躍した建築家です。作品は、活気に満ちた色彩と大胆な曲線によって特徴付けられるという評価も、この大使館を見るとうなづけます。
ルイ・オオタケ:ブラジル大使館のインスタグラム
大使館の前面にあるのは「黄色い壁」。ルカテッリさんの作品の上部に黄色い部分が残っているように、下地が黄色です。
建物の大胆な曲線を描くフォルム、ファサード(前面)に壁を押し出す配置など、ルイ・オオタケさんのチャレンジングな精神が見て取れます。2021年11月にサンパウロで亡くなりました。83歳の生涯でした。
この黄色い壁は、時々に入れ替わって、アート作品が現れます。
黄色い壁:ブラジル大使館のフェイスブック
ハンナ・ルカテッリさんの作品の制作過程が、ブラジル大使館のフェイスブックに載っていました。
制作過程:ブラジル大使館のフェイスブック
建物の入り口のガラス面には、植物の群生する様子が描かれています。サンパウロ出身の画家・現代美術家、大岩オスカールさんの作品です。
こちらは大岩オスカールさんの国際交流基金による紹介動画。
§ ブラジル大使館のストリートアートのまとめ
多様な民族で構成されている国、ブラジル。スケールの大きなアートの表現があるようです。南半球の大気を感じた後は、キラー通りの方へ行ってみましょうか。きょうもいい一日になりそうです。
【 JAARAで散歩】青山で散歩
▽黄金色のトンネルを抜けに 明治神宮外苑のイチョウ並木へ
▽おもしろい絵本と出会いに 北青山の「伊藤忠SDGsスタジオ」へ
▽明治の軍人の気概に触れる 旧乃木邸へ
▽秘密の道を抜けてパブリックアートを見る 青山一丁目駅へ