(この記事は、2022年の6月についての記事です)
天皇、皇后と愛子内親王、上皇、上皇后は23日の沖縄慰霊の日に際し黙祷した。秋篠宮一家については報道されていないが、同様に黙祷したと思われる。明仁上皇の沖縄への思いは深く、天皇、秋篠宮に引き継がれている。戦争の悲惨さと共に、日本という国への思いがあるだろう。
¶ 日本国の戦争、その戦争が苛んだ沖縄の悲惨
明仁上皇は、法政大学教授で沖縄文化研究所所長を務めた外間守善さん(1924~2012)から沖縄の歴史について聞き、天皇としての沖縄への態度を形作ったと思われる。
天皇と接する外間さんに対し批判もあったと思う。だが、外間さんなくして明仁上皇が沖縄の現実を知ることはなかった。明仁上皇は沖縄戦の悲惨さと、日本国のために戦った沖縄のことを聞いたのだと思う。
§ 文学を学び、歴史を聞く
外間さんは自宅を空襲で失い、学童疎開船「対馬丸」に乗船していたお妹さんを亡くし、お兄さんは県職員として自決されたらしい。外間さん自身、米軍との激しい銃撃戦を兵士としてくぐりぬけた。
外間さんは明仁上皇に沖縄の文学を教えていたわけだが、その折に、沖縄の歴史の現実を話したのだと思う。
明仁上皇(当時皇太子)が外間さんと初めて会ったのは沖縄の展覧会。その時に、外間さんのお妹さんが学童疎開船「対馬丸」に乗っていて亡くなったことを聞いた。自分と同じ年代の多くの子どもが犠牲となったことに、強い衝撃を受けたことは想像に難くない。
■外間守善 – Wikipedia
§ ひめゆりの塔で火炎瓶投げられた後のメッセージ
初めて沖縄を訪問するとき、激しい抗議を受けることは分かっていた。外間さんとは、当時の情勢などについて話し合っていたのだと思う。明仁上皇は火炎瓶を投げつけられた夜、長文のメッセージを出した。
「多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人びとが長い年月をかけて、これを記憶し、一人ひとり、深い内省の中にあって、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」
このメッセージは、あらかじめ用意していたのではないかと思う。ひめゆりがあろうがなかろうが、それを伝えたかったのではないだろうか。そして、そのメッセージについて、外間さんと相談していたのかもしれない。
§ 次世代の子どもに継承
沖縄について明仁上皇は子どもたちに話している。秋篠宮は2014年(平成26年)の誕生日に際した記者会見で次のように述べている。
「私が本当に子どもの頃から度々に両陛下から戦争の話を聞きました。特にあれは,1975年でしたでしょうか,まだ復帰から3年の沖縄で海洋博が行われたときには,非常に激しい地上戦になった沖縄の戦争のときの話を,折に触れてというよりも非常に頻繁に沖縄戦の話を聞き,またそれに関連する映画を見たりいたしました。その後も度々に戦争のときの話を聞く機会があり,私たち(両殿下)は,戦争というものを二度と繰り返してはいけないということを強く思ったわけです」
■文仁親王殿下お誕生日に際し(平成26年) – 宮内庁
§ 沖縄という土地への思い
明仁天皇の沖縄への思いは、太平洋戦争で、日本で唯一の地上戦が戦われ、多くの犠牲を出した土地であるということがあるだろう。だが、その時、沖縄の人たちは、日本を思い、その中心にいる天皇を思って戦ったことを知り、それをとても重く感じたのではないだろうか。
戦後の日本、戦後の皇室は、その沖縄の戦時中の戦いに何かを報いているのだろうか。返ってそれとは逆のことになっていないか。
沖縄という土地。日本の中の沖縄。それへの特別な思いが明仁上皇にはあるのだと思う。
(2023.6.23 皇室王室勉強家・以出江 凡)
¶ 日誌
天皇 皇后 愛子内親王
▽6月17日(金曜)
【天皇】国会終了に当たり衆参両院議長からあいさつを受けた(皇居・宮殿)
▽6月20日(月曜)
【天皇・皇后】芸術院授賞式に出席。筒井康隆さんらが受賞
▽6月23日(木曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】沖縄慰霊の日に際し黙とう
上皇 上皇后
▽6月17日(金曜)
【上皇・上皇后】特別展「公文書でたどる沖縄の日本復帰」を訪問(東京都千代田区の国立公文書館)
▽6月23日(木曜)
【上皇・上皇后】沖縄慰霊の日に際し黙とう
秋篠宮家
▽6月17日(金曜)
【秋篠宮・紀子妃】沖縄の日本復帰50年を記念して開催中の特別展「琉球」を鑑賞(東京都台東区の東京国立博物館)
一般
▽6月20日(月曜)
【ベルギー王室】ベルギー当局は20日、コンゴ(旧ザイール)が宗主国ベルギーから独立した翌年の1961年に暗殺された「コンゴ独立の英雄」ルムンバ初代首相のものとされる歯を親族に返還した。暗殺にはベルギー軍や秘密警察の関与が指摘されており、デクロー首相は同日の式典で謝罪
¶ 関連サイト
宮内庁HP
【天皇皇后両陛下のご日程 令和4年(4月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和4年(4月~)】
メディア
皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
このほかの【皇室の話題】
▽天皇の〝本質〟とは何か、それは誰によって形作られるのか(2023年6月2日~8日)
▽皇室は伝統文化継承の担い手(2023年5月26日~6月1日)
▽天皇の存在を国民に印象付ける活動の場面とは何か(2023年5月19日~25日)
▽上皇、上皇后が皇室に存在する意味とは(2023年5月12日~18日)
▽英国と日本、神さまと王権との関係の違いは(2023年5月5日~11日)
▽天皇・皇族を縛る〝掟(おきて)〟とは(2023年4月28日~5月4日)
▽雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)
▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)