【皇室の話題】天皇・皇族を縛る〝掟(おきて)〟とは(2023年4月28日~5月4日)

         


 
 秋篠宮夫妻が英国王の戴冠式へと旅立った。彼らが戴冠式に参列することに対し、「ふさわしくない」「英国が納得していない」など、根拠の薄弱な批判が出ている。秋篠宮家への批判的なトーンは、長女の眞子さんの結婚の「問題」から続いている。「問題」の背景にある〝皇室の掟(おきて)〟について、今回は考えてみたい。

¶ 天皇・皇族を縛り付ける〝掟〟とは何か

 天皇、皇族の行動、発言、たたずまいの在り方はいろいろと制約されている。天皇、皇族は、彼ら彼女らだけに課される特別な〝掟(おきて)〟に縛り付けられていると言っていいだろう。その掟とは何か。彼ら彼女らは人間性を発揮する中で、その掟を乗り越えることができるのだろうか。

§ 社会にあふれている掟

 人間社会にはむかしから、してはいけないこと・すべきことを定めた〝掟〟がある。「他人(ひと)を殺してはいけない」「他人のものを盗んではいけない」という掟は、法律という形になっている。(刑法の「殺人罪」「窃盗罪」)。違反すると罰金や懲役などの「罰」を受ける。
 ところが、法律以外にも、社会には幅広い掟があふれている。身近なものでは「礼儀」や「マナー」がそうである。「罰」は受けないが、相手から「嫌われる」「蔑(さげす)まれる」という報いを受ける。法律のように文章になっていないので、『イザというとき恥をかかない礼儀とマナー』というような本を読んで勉強する。

§ 国民が決める皇室の掟

 皇室にもさまざまな掟がある。「してはいけないこと・すべきこと」がある。律令時代や明治のむかしは、それを皇室内部で決めていればよかった。ところが、この掟を国民が決めるようになった。戦後の「大衆天皇制」である。
 国民(大衆)が「あるべき皇室の姿」を決めるのだ。この掟の内容に抵触したのが眞子さんの結婚だった。何が抵触したのだろうか。

§ 理想の人物としての皇族

 一連の批判の発端は小室さんのお母さんだ。彼女に対する批判とは、ざっくり考えると、どうも①倫理に反すること、常識に反することをしているようだ(借金踏み倒し)、②上品とはいえない言葉遣いや行動をしているようだ(メールの文面)―ということのように思われる。
 (確認のため記すと、批判されている姿は、小室さんのお母さんの真実実態とは関係のない、メディアが作った姿だということだ。少なくとも私は彼女に会ったことがない)
 そうとすると、批判が示しているのは「皇族は、倫理観や常識のない下品な人物の息子とは結婚すべきではない」という掟だ。ひいてはそれは、「皇族は(元皇族となったにせよ)倫理観や常識を持つ上品な人物でなくてはならない」という掟とほぼ同じだ。
 天皇、皇族の言動に関して、法律という明文の掟は(政治的権能についてを除き)ほぼ何も規定していないが、国民が決める掟は、その姿を厳然と規定している。国民は天皇、皇族に「理想の人物でなければならない」という掟を課している。

§ 掟破りの恋

 むかしから、さまざまな立場の人間同士が恋をすることがある。『ロミオとジュリエット』を持ち出すまでもなく、「掟破りの恋」というのはひとつのテーマともいえる。
 その物語では、当事者の恋愛感情の深さから、周囲は、掟に反してでも、その恋が実るように願う。
 眞子さんの結婚の場合、小室さんは「眞子さんを愛している」と明言した。(ちょっと唐突感はあったにせよ)。ところが、眞子さんからは「小室さんを愛している」という気持ちが伝わってこなかったように私は思う。
 眞子さんが小室さんを愛していたとして、その心情を切々と表現することができていれば、人々の反応は変化していたのではないだろうか。私はそれを聞きたかった。

§ 掟に立ち向かい、したたかに生きる

 眞子さんは案外、したたかな人物なのかもしれない。ただ、したたかであったにしても、よく考え、誠実に考え、着実に実行する能力がある人物なのだと思う。
 眞子さんは今後も、したたかに生きていくと思うし、したたかに生きていってほしいと思う。彼女は「元皇族」の肩書から一生逃れられない。したたかに生きていかないと、心が折れてしまうだろう。掟はそれほどに手ごわい。
(2023.5.6 皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽4月28日(金曜)
【天皇・皇后】内閣府主催の「第17回みどりの式典」に出席(東京都千代田区のホテル)


 
▽5月4日(水曜)
【天皇・皇后・愛子内親王】ウィーン少年合唱団のコンサートを鑑賞(港区のサントリーホール)

上皇 上皇后

▽5月1日(月曜)
【上皇・上皇后】14~18日の日程で京都府と奈良県を私的に旅行すると宮内庁が発表。葵祭観覧のほか、尼門跡寺院の大聖寺(京都市)や中宮寺(奈良県斑鳩町)などを訪問する

秋篠宮家

▽5月1日(月曜)
【秋篠宮・紀子妃】チャールズ国王の戴冠式参列で英国を公式訪問するのを前に、天皇、皇后にあいさつ(皇居・御所)
▽5月4日(水曜)
【秋篠宮・紀子妃】チャールズ国王の戴冠式に参列するため、英国へ向けて政府専用機で羽田空港から出発

宮家

▽4月28日(金曜)
【常陸宮の華子妃】上野の森美術館(台東区)を訪れ、「上野の森美術館大賞展」の授賞式典に出席、作品を鑑賞

宮内庁

▽5月2日(火曜)
▼宮内庁は、埼玉県と千葉県にある「鴨場」で6月と9月に開く見学会の参加者を募集。ホームページで詳細を公表。締め切りは5月19日
 鴨場見学会(地域住民外)の実施 – 宮内庁 (kunaicho.go.jp)

一般

▽4月28日(金曜)
【英国】英国のジュリア・ロングボトム駐日大使は28日、ロンドンで5月6日に行われるチャールズ国王の戴冠式にへの秋篠宮夫妻参列について「英王室と日本の皇室の関係は非常に強いつながり」で「出席はそれを象徴する」と述べた
▽4月29日(土曜)
【英国】英国の社会調査団体「全国社会調査センター」は28日、世論調査で英君主制の存続を「大変重要だ」と答えた人が29%にとどまり「記録的な低さとなった」と発表
▽5月1日(月曜)
【英王室】6日に行われる英国のチャールズ国王戴冠式の式次第概要が4月30日までに明らかになった。女性聖職者や、シーク教や仏教などキリスト教以外の宗教代表が初めて式の進行に携わる
【コモンウェルス・レルム】ニュージーランドのヒプキンス首相は1日、「ニュージーランドがやがて完全に独立した国になるのが理想だ」と述べ、国家元首を英国王とする現在の立憲君主制から、共和制へ移行することを支持する考えを示した
▽5月2日(火曜)
【英王室】1日、チャールズ国王の孫のシャーロット王女が2日に8歳の誕生日を迎えるのを前に近影を公開。王女はウィリアム皇太子の長女。王位継承順位3位

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(4月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(4月~)】

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL

これまでの【皇室の話題】

▽雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)
▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)
▽愛子内親王の和歌に注目集まる(2023年1月20日~26日)