【皇室の話題】淡々とした事実を物語にしてしまう天皇(2023年6月30日~7月6日)

         


 
 天皇、皇后が6月12日に日本学士院の授賞式に出席した。学士院が学者に賞を与える場面に同席したというだけのことともいえるが、この場に天皇がいることが「学士院賞」という物語を形成しているように感じる。天皇は物語をつくるのに便利な存在だ。理屈で説明できないことを物語で説明する時のツールになる。

¶ 学士院賞という物語

 学士院賞は学士院の会員が選んでいるのが、「天皇が与えている」という物語になっているのを感じる。「恩賜賞」など天皇が直接出てくる要素があるのでそう感じる度合いが高まるのだろう。

§ 学士院賞を選ぶのは学者

 学士院賞を選ぶのは学士院の会員である。「日本学士院授賞規則」に選考方法が定められている。
 皇室は、学士院賞にも、学士院そのものにも、お金を出しているようである。ただ、学士院賞も、優れた業績「恩賜賞」も、選んでいるのは学者である。

§ 天皇が賞を与える物語

 「天皇という素晴らしい権威がいて、その権威が賞を与える」という物語を、日本学士院賞には感じる。
 現在の天皇は科学(道や水問題)に関心があっても、あらゆる学術に精通しているわけではないので、賞を選定するのは困難である。天皇が業績を評価して賞を与えるという物語には理屈がたたない。
 だが、みんなそれを承知の上で、「天皇が与えている」という物語を受け入れている。物語なので理屈がたたなくても良いのだ。

§ 出席と恩賜賞でます物語度

 皇室が特定の「賞」にお金を出したり杯を提供したりするケースは多い。天皇賞、天皇杯などの形である。
 一番大きなのは国民体育大会の天皇杯、皇后杯だろう。でも、この場合は物語性が希薄である。
 規模が大きすぎるし、杯の授与の場面に天皇、皇后がいない(秋篠宮など皇族がいる)。
 学士院授賞式には天皇が出席するし、「恩賜賞」という天皇が選んでいるかのような賞もある。それで物語性が高まるのだろう。その際、天皇はありがたくなくてはならない。「雲の上の人」でなくてはならない。

§ 物語に便利な存在

 学士院賞、芸術院賞は物語性が高いと思う。他の天皇賞、天皇杯でも「天皇が賞を与える」という物語が通底していると言えよう。
 人間が何かを納得したい場合に、方法としては二つある。理屈という方法と物語という方法である。天皇は多くの物語を作っている。物語をつくるのに便利な存在なのだと思う。
(2023.7.8 皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽6月30日(金曜)
【天皇】「節折(よおり)の儀」(皇居・宮殿)、「大祓(おおはらい)の儀」、皇族方を代表して佳子内親王参列(皇居・宮中三殿に付随する神嘉殿の前庭)
▽7月3日(月曜)
【天皇・皇后】優れた芸術活動を表彰する第79回日本芸術院賞の授賞式に出席。
受賞者は小説家の小川洋子さん(61)ら9人(東京・上野の日本芸術院会館)
【天皇・皇后】2019~2022年度に新たに日本学士院や日本芸術院の会員となった計42人と面会。学士院は2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんや、2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんら、芸術院は俳優の黒柳徹子さんらが出席(皇居・宮殿)

秋篠宮家

▽6月30日(金曜)
【佳子内親王】「大祓の儀」に参列(皇居・宮中三殿に付随する神嘉殿の前庭)
【佳子内親王】秋篠宮邸の改修中の仮住まい旧「御仮寓所(ごかぐうしょ)」に1人で居住されていると宮内庁が明らかにした。経費削減のため一家で相談して決めたという

上皇 上皇后

▽6月30日(金曜)
【上皇・上皇后】琉球舞踊立方の重要無形文化財保持者(人間国宝)である志田房子さんと、娘の真木さんの琉球舞踊公演を鑑賞(東京都千代田区の国立劇場)

宮家

▽6月30日(金曜)
【高円宮の久子妃】サッカーの女子ワールドカップ(W杯)で日本代表の試合観戦などのため7月21~28日の日程でニュージーランドとオーストラリアを非公式に訪問すると宮内庁が発表

一般

▽7月1日(土曜)
【オランダ王室】ウィレムアレクサンダー国王は1日、同国の過去の奴隷制について謝罪。奴隷制廃止から150年を記念してアムステルダムで開かれた式典で演説した
【英王室】英大衆紙サンが昨年12月に掲載したメーガン妃を巡るコラムについて、英国の報道審査機関は6月30日、記述が性差別的だと認定した。サンに対し、差別に至った経緯を説明する記事を掲載するよう求めた。サンのコラムニストは「(メーガン妃が)裸で英国中をパレードする日を夢見ている」「彼女を細胞レベルまで嫌っている」などと記載。審査機関は「軽蔑し差別する描写」「屈辱的で下劣だ」と非難した

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(7月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(7月~)】

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL

このほかの【皇室の話題】

▽天皇の〝本質〟とは何か、それは誰によって形作られるのか(2023年6月2日~8日)
▽皇室は伝統文化継承の担い手(2023年5月26日~6月1日)
▽天皇の存在を国民に印象付ける活動の場面とは何か(2023年5月19日~25日)
▽上皇、上皇后が皇室に存在する意味とは(2023年5月12日~18日)
▽英国と日本、神さまと王権との関係の違いは(2023年5月5日~11日)
▽天皇・皇族を縛る〝掟(おきて)〟とは(2023年4月28日~5月4日)
▽雅子皇后の苦悩とは何か、どこから来るのか(2023年4月21日~27日)
▽短期と長期 どちらがほんとの「お得」なの?(2023年4月14日~20日)
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること(2023年3月24日~30日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)
▽愛子内親王の和歌に注目集まる(2023年1月20日~26日)