【皇室の話題】皇室ではなぜ儀式が重視されるのか(2023年9月8日~14日)

         


 上の動画は、現在の天皇による即位後初の認証官任命式
 
 2023年9月13日、岸田政権の内閣改造が行われた。天皇が皇居・宮殿の松の間で、閣僚の認証官任命式(認証式)を行い、第2次岸田第2次改造内閣は正式に発足した。天皇はこれに先立ち同日午後、皇居の水田で稲刈りをした。稲刈りの時の服装からモーニングに着替えて儀式に臨んだ。作業服姿では儀式は行えない。いっそのこと、水田脇で認証官任命式を行えば、というわけにもいかない。
 

¶ 儀式のあり方ついて注意深く考えていたい

 皇室は儀式を重んじる。なぜなら、儀式はいつでも、決まった取りに行われ、安定性と確実性を表徴するからだと思われる。儀式は長く続き、歴史が裏打ちされているとも考えられるが、背景には意図があり、時代の変遷とともに、社会思想との齟齬が生じる場合がある。儀式が現代にふさわしい形なのか、注意深く考えていたい。
 

§ 儀式は安定性と確実性を表徴する

 秋篠宮家の次女眞子さんが結婚する時は、皇室の結婚の際の儀式「納采の儀」「告期の儀」「入第の儀」が行われなかった。秋篠宮は2021年の誕生日に際した記者会見で「それを行わなかったそのことによって皇室の行事,そういう儀式というものが非常に軽いものだという印象を与えたということが考えられます」と述べている。(参照)。儀式は重いものなのである。
 9月13日にあった認証官任命式の儀式は、やり方が決まっている。やり方についての通達がされている。これに限らず、天皇が主体となる式の次第は宮内庁式部職が次第を用意している。
 また、認証される側のやり方については、河野太郎さんのブログにある記事が興味深い。これは法令や通達、次第として決まっているわけではないが、言い伝えられているのだろう。
 
 ■親任式及び認証官任命式の次第 – Wikisource
 ■国務大臣認証式 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト (taro.org)
 

§ 儀式は伝統にもつながる

 やり方が決まっていて、いつでも同じように行わると、「伝統」といってよいものになってくる。
 伝統がなぜ尊重されるかというと、長い時間を通じてそれが不変だからであろう。歴史がそのあり方を鍛え、適切でないものは淘汰され、洗練された形になっていると考えられるのだ。
 

§ 伝統の背後と時代の変遷

 ただ、儀式が形作られる背景には、ある種の意図がある。
 認証官任命式の形は「皇室儀制令」、結婚の儀式は「皇室親族令」という旧皇室令に定めを踏襲している。これらの皇室令は、1909年(明治42年)に天皇の代替わりの儀式が「登極令」が定められたのに続いて整備された。天皇を中心とした日本の国制を、儀式の上で裏付けたのだ。
 長い歴史があるような気にもなるが、明治維新以後の定めだ。旧来の制を参考にしているだろうが、当時の政府の意図にのっとっていると考えてよいだろう。
 さらに、皇室の位置付けは、先の大戦での敗戦を期に、明治時代と一変した。引き続き取り入れられている考え方はあるが、根本的な位置付けが変わっている。ところが儀式はほとんど前例を踏襲している。新たな儀式は形作られなかった。時代が変遷し、変化した社会思想との齟齬が生じているともいえる。
 
 ■皇室儀制令 大正15年10月21日皇室令第7号 | 日本法令索引 (ndl.go.jp)
 ■官報 1926年10月21日 – 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)
  皇室儀制令
  第七條 親任式親授式親補式竝信任状捧呈ノ式及解任状捧呈ノ式ハ宮中ニ於テ之ヲ行フ
 ■皇室親族令 明治43年3月3日皇室令第3号 | 日本法令索引 (ndl.go.jp)
 ■法令全書 明治43年 – 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)
  皇室親族令
 ■登極令 明治42年2月11日皇室令第1号 | 日本法令索引 (ndl.go.jp)
 ■法令全書 明治42年 – 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)
  登極令
 

§ 現代との整合性に注意深くありたい

 儀式が長く決まった形で行われているからといって、歴史によって洗練されているということだけでその不変性に頷くわけにはいかない。現代にふさわしい形なのか、注意深くありたい。でもまあ、そんなことを考え出すとキリがないし、めんどうくさいということはあるなあ。
 (2023.9.16 皇室王室勉強家 以出江 凡)
 

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽9月8日(金曜)
【天皇】東京都内で開かれている第21回先進7カ国(G7)下院議長会議に出席する各国の下院議長らと面会(皇居・宮殿)
【天皇・皇后】6月や7月の大雨などで甚大な被害を受けた茨城、和歌山、福岡、秋田の4県に見舞金。宮内庁の鈴木敏夫総務課長が各自治体の東京事務所長らに渡した
▽9月11日(月曜)
【天皇】モロッコ地震で、天皇、皇后からのお見舞いとして国王モハメド6世に電報を送った
【天皇・皇后】紀子妃の誕生日あいさつの訪問を受ける(皇居・御所)
【愛子内親王】紀子妃にお祝いのあいさつ(東京・元赤坂の赤坂御用地にある秋篠宮邸)
▽9月13日(水曜)
【天皇】皇居内の生物学研究所脇にある田んぼで稲刈り
【天皇】第2次岸田第2次改造内閣の閣僚の認証官任命式
▽9月14日(木曜)
【天皇】スウェーデンのカール16世グスタフ国王の即位50年に当たり、天皇、皇后のお祝いの気持ちを伝える電報を国王に送った
 

秋篠宮家

▽9月11日(月曜)
【紀子妃】57歳の誕生日。天皇、皇后にあいさつ(皇居・御所)上皇夫妻にあいさつ(東京・元赤坂の赤坂御用地内の仙洞御所)
▽9月12日(火曜)
【秋篠宮・紀子妃】「福岡アジア文化賞」の授賞式に出席(福岡県)
▽9月13日(水曜)
【佳子内親王】第70回日本伝統工芸展を鑑賞(東京・日本橋の日本橋三越本店を)佳子内親王は展覧会を主催する日本工芸会の総裁
▽9月14日(木曜)
【悠仁親王】新型コロナウイルスに感染したと宮内庁が発表。18日まで宮邸で療養する予定
 

上皇 上皇后

▽9月11日(月曜)
【上皇・上皇后】テート美術館展(国立新美術館)
 

宮家

▽9月8日(金曜)
【常陸宮】新型コロナウイルス感染で東京都渋谷区の日本赤十字社医療センターに入院していた常陸宮(88)が退院したと宮内庁が発表。体調は回復
▽9月9日(土曜)
【三笠宮の寛仁親王家の彬子女王】ラグビーワールドカップフランス大会観戦などのためフランスに向けて出発。彬子女王は日本ラグビーフットボール協会の名誉総裁▽9月13日(水曜)
【高円宮の久子妃】皇室会議の皇族の予備議員1人を決めるくじ引きが皇居・宮殿であり、高円宮の久子妃が選ばれた
 

宮内庁

▽9月13日(水曜)
【宮内庁】皇室会議の予備議員1人を決めるくじ引きで高円宮の久子妃が選ばれた。7日の互選で予備議員に選ばれた上皇后が辞退、次点の三笠宮の百合子妃も辞退し、それに次ぐ同得票数で並んだ3人が規定によりくじ引きをした。皇族議員の2人は秋篠宮と常陸宮の華子妃、予備議員は秋篠宮の紀子妃と高円宮の久子妃
 

一般

▽9月8日(金曜)
【英王室】ヘンリー王子は7日、英国に一時帰国。妻メーガン妃は同行せず。8日がエリザベス女王の一周忌だが、チャールズ国王、ウィリアム皇太子と会う予定はないという
 

¶ 関連サイト

宮内庁HP

【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(7月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(7月~)】
 

メディア

皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
 

【皇室の話題】

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