【皇室の話題】天皇について、もやもやした時に考えること(2023年3月24日~30日)

         


 
 愛子内親王の結婚についての記事で「旧宮家」の人の話が出てくる。「特別な家柄」の人だ。「家柄で差別されない」って憲法には書いてあったはず。実際にはいろいろな「家柄」があるが、考えてみれば「特別な家柄」の最たるものは「天皇家」だ。なぜ「天皇家」は法律の上でも特別なのだろう、ということを少し考えてみる。

¶ 天皇・皇室についてもやもやした時に考えてみること

 皇室は特別な存在だ。私たちとはなにかが違う。なぜそんな特別な人たちが存在するのだろう。憲法には「人はみんな平等」と書いてあるはずで、それに反している。なのに存在している。なぜなんだろう。なんかもやもやする。
 そこで、もやもやを解消するために、皇室が特別な存在なのは「私たちがお願いしているから」と考えてみることにする。その方が、考えを進めやすいと思う。

§ 特別なのは「私たちがお願いているから」と考えてみる

 天皇は歴史上、特別な存在だった。なにしろ貴族の親玉なわけだから。それはそれとして、そのような歴史的な経緯を含めて、現時点で、あらためて「特別な存在でいてください」とお願いしていると考える。
 なぜお願いしているかというと、その方が私たちにとって便利だから、「お得」だからだ。

§ 憲法違反だからよくないと考える人はいる

 天皇が世襲によってつながる、つまり皇室が特別な「家柄」であることは憲法が定めている(2条)。一方で憲法は「家柄によって差別されない」と定めている(14条)。憲法の条文の内部で矛盾が生じている。
 「家柄によって差別されない」というのは、現代の私たちにとって絶対的に正しい。そうすると、それに違反している皇室はよろしくない。だから皇室はなくした方がいい、と考える人はいる。

§ これまでの説明はもやもやしている

 憲法学者はこの矛盾をどう説明しているのか。「2条が14条の例外なのは、天皇が特別な存在だから」と説明してきた。天皇が特別な存在、例外的な存在であっても、私たち一般人には関係がないので、まあいいじゃありませんか、というわけだ。
 でもこれだと、天皇がなぜ特別なのかが説明されていない。もやもやが解消しきれない。
 そこで、その根拠を「私たちのお願い」に設定してみる。
 天皇が特別な存在である根拠について、私たちと無関係な「そもそもそうだから」が根拠なのではなくて、私たちの「お願い」が根拠になっている、ととらえ返すのだ。
 憲法は私たちが望んだものだ。天皇の家柄はそれに矛盾するのだが、それでもかまわないから、天皇に特別な存在でいてもらうように、あえてお願いしていると考えるのだ。

§ 実は憲法に書いてある

 憲法1条には、天皇の地位について「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と書いてある。2条には、天皇の地位(皇位)は「世襲のもの」として継承されると書いてある。
 「天皇の地位」も「世襲による継承」も「日本国民の総意」に基づくのだ。つまり憲法には「天皇(皇室)は特別な存在でいてください」と国民がお願いしている、と書いてある。

§ 私はお願いしていない

 でも「いやいや、私は天皇にそんなお願いをした覚えはないし、お願いする気はないよ」という人がいるだろう。
 確かにその人はお願いした覚えがないかもしれないが、憲法では、その人を含めた国民が全体の総意としてお願いしたことになっている。

§ 釈然としない時どうするか

 自分がお願いした覚えがないのに、自分を含めた国民全体がお願いしたことにされているのはどうも釈然としない。
 法律の定めについて釈然としないというケースはほかにもいろいろある。「一票の格差」もそうだし、「夫婦別姓」もそうだ。
 釈然としない人たちは法廷闘争や社会運動で闘っている。なので、憲法から天皇を削除したいのなら、闘うことになる。

§ とりあえず「お願いしている」と考えてみる

 「よし、闘いを始めよう」と考えるにしても、いったんとりあえず「私たちがお願いしている」と考えてみた方がやりやすいと思う。
 なぜなら、お願いしているのには「お得」だからという理由があるわけで、その「お得」がほんとうにお得なのかどうか、と考えを進めることができるからだ。

§ いろいろなことが見えてくる

 天皇はなぜ特別な存在なのか。それは私たちがお願いしているから、と考えてみると、いろいろなことが整理されて見えてくると思う。その〝いろいろ〟については、あらためて別の機会に考えることにする。
 (2023.4.2 皇室王室勉強家・以出江 凡)

¶ 日誌

天皇 皇后 愛子内親王

▽3月24日(金曜)
【天皇・皇后】過疎地や離島など厳しい環境で医療や福祉を支えてきた医師らに贈られる厚生労働大臣表彰の医療功労賞受賞者10人と面会(皇居・御所)
【天皇・皇后・愛子内親王】丸の内の静嘉堂文庫美術館を私的に訪問。ひな人形などを展示中
▽3月29日(水曜)
【天皇・皇后】この冬に大雪などで甚大な被害を受けた北海道と青森県、新潟県に見舞金を贈った。宮内庁の総務課長が伝達

秋篠宮家

▽3月24日(金曜)
【佳子内親王】外務省による中南米地域を対象とした交流プログラムで日本を訪れていたブラジルの議員グループと面会(秋篠宮邸)

宮家

▽3月24日(金曜)
【常陸宮】日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)を退院。尿管結石を破砕する手術を21日に受けた。術後の経過は順調という
▽3月27日(月曜)
【高円宮の久子妃】名誉総裁を務める日本アジア協会の年次総会に出席(東京都目黒区の在日ポーランド大使館)

一般

▽3月24日(金曜)
【英王室】24日、チャールズ国王とカミラ王妃が26~29日に予定していたフランス公式訪問が延期になったと発表。英BBC放送によると、フランス各地で行われた政府の年金制度改革に反対するデモを受け、同国のマクロン大統領が英政府に延期を要請した
▽3月25日(土曜)
【英王室】ロンドンのウェストミンスター寺院は24日、同寺院で5月6日に営まれるチャールズ英国王の戴冠式を記念し、5月15日~7月29日に特別ツアーを開催すると発表した。ツアー参加者は、戴冠式で国王が座るいすが置かれるエリア「コスマティ・ペーブメント」に靴を脱いで靴下着用で立ち入ることが認められる
▽3月28日(火曜)
【英王室】ヘンリー王子や人気歌手エルトン・ジョンさんら著名人グループがプライバシーを侵害されたとして英紙デーリー・メールの発行会社を提訴した訴訟で、両氏が27日、同日から始まった予備審問に出席するためロンドンの裁判所に姿を見せた。ヘンリー王子が英国を訪問するのは昨年9月のエリザベス女王の国葬以降初めてとされる
ヘンリー王子、タブロイド紙との裁判で王室を批判「電話の盗聴について教えてくれなかった」 | カルチャー | ELLE [エル デジタル]
ヘンリー王子がイギリスに緊急帰国、“重要な情報”を「隠していた」と再び王室を批判 (1/2) – フロントロウ | 楽しく世界が広がるメディア (front-row.jp)
ヘンリー王子がエリザベス女王の国葬以来初めてイギリスに帰国し、裁判に出廷|ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)公式 (harpersbazaar.com)
▽3月30日(木曜)
【英王室】即位後初の外国公式訪問としてドイツの首都ベルリンに滞在中の英国のチャールズ国王は30日、ドイツ連邦議会で演説し、ロシアのウクライナ侵攻を非難し「欧州の安全保障と民主主義の価値が脅かされている」と訴えた。昨年9月に死去したエリザベス女王は公の場での政治的発言を控えたが、国王は踏み込んだ発言で、侵攻に対する明確な姿勢を示した。国王はドイツ語と英語を織り交ぜて演説

¶ 参考サイト

宮内庁HP
【天皇皇后両陛下のご日程 令和5年(1月~)】
【秋篠宮家の御日程 令和5年(1月~)】
 
皇室ウイークリー 産経新聞
皇室7days 朝日新聞DIGITAL
 
これまでの【皇室の話題】
▽皇室の生きづらさとは(2023年4月7日~13日)
▽天皇の「お得感」の歴史的な変遷とは(2023年3月31日~4月6日)
▽愛子内親王の結婚報道で迷惑するのは誰か(2023年3月17日~23日)
▽天皇、皇族の行動を決めるのは前例と理念(2023年3月10日~17日)
▽天皇は男系男子でなければだめなのか(2023年3月3日~10日)
▽国際関係での皇室の「お得感」とは(2023年2月24日~3月2日)
▽皇室の存在の「お得感」とは何か(2023年2月17日~23日)
▽皇室の情報発信 何を伝えるのか(2023年2月10日~16日)
▽あるべき姿、役割をどうとらえるのか(2023年2月3日~9日)
▽佳子内親王が願う「幅広い選択肢を持てる社会」(2023年1月27日~2月2日)
▽愛子内親王の和歌に注目集まる(2023年1月20日~26日)